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2017.5.23ドローン屋内飛行技術に関する研究開発
建物内での安定飛行と正確なアプローチを行う風量測定用ドローンの開発

当社は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 (以下、産総研) と、建築設備工事の生産性向上に向け、建物内においてドローンを活用するための基盤技術を開発しました。
 
近年、土木や建築工事においてドローンは、写真撮影による現状確認や航空測量などに広く活用されています。しかしながら、建物の設備工事では大部分が建築躯体施工後の屋内で行われるため、ドローンの安定した自律飛行を行うにはGPSを使わない方法を検討する必要があります。また、屋内には壁や柱、建設資材や作業員などの障害物も多く存在するため、人によるドローンのマニュアル操作には高度な熟練操作技術が求められます。一方、屋内工事には、アプローチが困難な場所や人の立ち入りを避けたい場所、人にとって危険な場所もあり、作業員が行う屋内工事を代替するドローンの活用に大きな期待が寄せられています。そこで当社は、つくば市の当社中央研究所に建物内の天井を模擬した飛行実験施設を設置し、産総研と共同でドローンの屋内飛行技術に関する研究開発を行いました。

研究開発の第一弾として、建物内での安定飛行と目標物への正確なアプローチを果たす基盤技術の確立を目指し、「風量測定用ドローン」の開発に取り組みました。風量測定用ドローンは、高所にある天井に設置された空調吹き出し口 (以下、制気口) の風量測定作業を代替するドローンです。
GPSを使わない方法については、産総研の画像処理による飛行技術を使用することで解決しました。この技術では、まずオペレータがカメラ画像上で制気口を指定します。屋内に固定したカメラで撮影した画像からドローンに装着した複数のマーカーを自動認識することでドローンの位置を計測します。その情報を基にドローンが自動で制気口にアプローチし、風量計を制気口に近づけて風量を測定します。
制気口からの風量測定には集風型風量計を使用しました。集風型風量計とは、制気口から吹き出された空気をフード付きダクトで集め、ダクト内に搭載した風速計により風量を測定するもので、当社が独自に開発した風量測定装置「WINSPEC※1」で培った技術を採用したものです。この集風型風量計により、ドローンのプロペラから発生する気流の影響を受けずに風量を測定することができます。
一般的なドローンは安定飛行のため搭載物を中央に集め、重心が機体の中心と一致するように設計しますが、この風量計を搭載するためにドローンの中央部にスペースを設ける必要がありました。そこで本ドローンはフレームを井形構造として風量計の設置スペースを確保し、バッテリーやオートパイロット等の搭載物は、重量バランスを十分に考慮したうえでその周囲に配置しました。これらの共同開発技術は特許出願済みです。
高さ3.5mの制気口に風量計を近接させる実証試験を行い、通常であれば仮設足場上で5分/カ所の作業時間が、開発したドローンを用いると仮設足場なしで1~2分/カ所に短縮されました。また、測定作業のみならず、機材の運搬、設置、他の制気口への移動、撤収などの作業時間やコストを考慮しても、仮設足場に比べて軽量かつコンパクトなドローンシステムを用いることの優位性は高いと考えられます。このように、屋内工事をドローンで代替することにより、作業時間の短縮に加え、仮設費の削減や安全性の向上が期待できます。

本開発により、ドローンの屋内における飛行と周囲環境との接触を伴う作業に関する基盤技術を確立するとともに、屋内飛行に関するさまざまな知見を得ることができました。今後も実証試験を重ね、建設中の建物や既存の建物・施設内を自律的に飛行し、設備の遠隔監視をはじめとする各種作業を行うためのドローンの実用化に向けて、引き続き研究を進めていきます。

※1 全自動型風量測定ロボットの技術を継承する、手動型の風量測定装置


  • 風量測定用ドローン (外観)

  • 風量測定用ドローン (飛行中)

  • 風量測定用ドローン (測定中)

  • 操作用PCのインターフェース画面
    (上の円が目標位置、下の円がドローンの位置)

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