特許・論文

中央研究所報2006年 Vol.13

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.13, 2006 pp.1-9

配管系の振動低減に関する研究
第3報 フレキ2 段挿入による配管振動低減効果の検証

白木秀児、田辺恵一、盆子原康博*1 近藤孝広*1

本研究は,配管系の振動低減技術の開発を目的として,前報ではフレキシブル継手を配管系に挿入した場合の振動特性について,数値解析,実験の双方から検討を行い,フレキシブル継手を適切に複数挿入することで配管振動を効果的に低減できることを示した。本報では各種条件下のフレキ2 段挿入による配管振動低減効果の検証を行った。

*1 九州大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.13, 2006 pp.11-20

ダイナミック型氷蓄熱システムの解氷予測

穴井俊博、大久保英敏*1

本報では,水の過冷却現象を利用したダイナミック型氷蓄熱システムの解氷特性を予測するため,CFDによる検討を試みた。相変化の計算に温度回復法を,固液共存域はダルシー流れを適用した。はじめに氷層の熱伝達係数を推定するため,実験結果に対応する熱伝達係数を探索した。その結果,解氷ノズルのレイノルズ数に比例して,熱伝達係数が変化する結果を得た。つぎに境界条件が計算精度に与える影響を確認するため,蓄熱槽入口温度と水位を変更し,実験結果と比較した。その結果,蓄熱槽入口温度が計算精度に与える影響が小さいこと,また,水位が低い場合,解氷ノズルのレイノルズ数が計算精度に影響することを確認した。

*1 玉川大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.13, 2006 pp.21-31

過冷却製氷方式を用いた共晶点蓄熱装置の開発

小川貴弘、山田育弘、外村琢*1、長門秀樹、大久保英敏*2、関光雄*1

筆者らは,共晶点濃度 (32.5%) の尿素-水混合溶液 (以下,尿素溶液) を利用して低温で蓄熱できる過冷却製氷方式を用いた蓄熱装置の開発を行っている。本報では,一定温度蓄熱の実用化可能性を確認するため,尿素溶液の物性値を測定し,潜熱蓄熱材として利用できる可能性を提示した。また,流動状態における尿素溶液の過冷却製氷の可能性および尿素溶液濃度が変化した場合の過冷却安定性を確認した。実験の結果,過冷却熱交換器に結晶核が入らないように融解できれば,過冷度2.0K以上の安定した製氷運転が可能であること,尿素溶液の結晶は清水の結晶に比べ融解する速度が遅いこと,尿素溶液濃度が共晶点濃度より薄い31.0%でも過冷却製氷が行えることを確認した。

*1 株式会社東洋製作所
*2 玉川大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.13, 2006 pp.33-40

半導体・液晶クリーンルーム用
自動フィルタリーク試験装置の開発

酒本晋太郎、田中幸悦

半導体・液晶工場のクリーンルーム竣工前検査において,天井面に設置されたフィルタのリーク試験は,人力による作業であるため工期短縮とコスト削減の障害となってきた。そこで筆者らは,リーク試験作業の自動化を図るために,フィルタ直下で検出器プローブを自動走査させるスキャナ部を台車に搭載し,これを手動昇降させるフィルタリーク試験装置を開発した。本装置の大きな特長は,ポリエチレンテレフタレート (PET) 製のマスカーを搭載していることである。これによって非単一方向気流のクリーンルームにおいても,試験前に個々のフィルタにマスカーを取り付けることなく容易にリーク試験を行うことができる。本報では,フィルタリーク試験装置の概要とその機能を示し,某半導体工場のクリーンルーム竣工前検査での使用実績とその評価について述べる。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.13, 2006 pp.41-61

花粉症対策のための抗原曝露システムの開発

湯懐鵬、藤田俊雄、穴井俊博、瀬田晃広、波部和弘*1、大久保公裕*2、橋口一弘*3、石川哮*4、奥田稔*5

花粉症用治療薬,対策用品などの治療に対する有効性評価を,年間を通じ,同時に10人以上の被験者に対し同一条件下で行うための抗原曝露システムを開発した。曝露室内では,居住域風速を不快なドラフトと感じさせない値 (0.4m/s以下) におさえつつ,スギ花粉の空間濃度分布が±10%程度の均一性を達成した。また,90秒間の自動純水洗浄により,曝露室内の迅速で確実なクリーンアップが実証された。

*1 東京臨床薬理研究所
*2 日本医科大学
*3 北里研究所病院
*4 熊本大学
*5 日本臨床アレルギー研究所

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.13, 2006 pp.63-70

揮発性有機化合物 (VOC) 測定用大形チャンバーの開発

芝本光雄*1、小林徳和、橋田三樹雄*1、湯懐鵬

建築材料,家具,事務機器,家電製品などから放散される揮発性有機化合物 (VOC) を測定するために,温湿度,換気量を高い精度で制御でき,VOC濃度を極限まで低減できる大形のチャンバーが求められている。筆者らは,化学物質過敏症患者の診断・治療サポート施設として多くの実績を持つ空気清浄化技術を応用して,VOC測定用大形チャンバーを開発した。このVOC測定用大形チャンバーは,性能評価指標として重要とされる測定室のVOCやホルムアルデヒドなどのバックグラウンド濃度の低減,ならびに換気回数や温湿度の制御において優れた性能を実現している。また,この大形チャンバーを採用した施設は国内の試験施設としては初めて,ドイツ政府の研究機関BAM (材料研究および材料試験に関するドイツ連邦研究所) から,複写機などから発生するエミッション (TVOC,オゾン,ダストなど) 測定の試験機関として認証を取得した。

*1 株式会社新菱アクアビジネス

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.13, 2006 pp.71-77

給湯用銅管の孔食事例

松川安樹、宮下守、須藤俊彦

給湯用銅管の孔食は,循環水のマットソン比 (硫酸イオン/炭酸水素イオン) が1を超える環境で発生することが報告されている。しかし,最近発生した事例のほとんどは,マットソン比では説明できない。また,「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」 (略称:ビル管理法) が改正され,2003年4月1日から,特定建築物 (延床面積3000m2以上の事務所,店舗,旅館など) では,給湯水についても飲料水と同等の水質 (0.1mg/L以上の残留塩素) を保持することが求められるようになった。このため,残留塩素が給湯用銅管の孔食発生を助長することが懸念されるが,0.1〜1.0mg/L程度の残留塩素が銅管の孔食発生をどの程度助長するかについては,明らかでない。本報では,最近発生した給湯用銅管の孔食事例を紹介することで,現状の問題点と今後の研究課題を提示する。

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