特許・論文

中央研究報2011年 Vol.18

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.1-20

水道水中における建築設備配管の異種金属接触腐食に関する研究

松川安樹

建築設備配管の腐食を抑制し、設備の延命を図ることは重要な課題である。空気調和・衛生設備では、炭素鋼・銅管・ステンレス鋼などさまざまな管材が使用されている。これらの管材は水道水環境で使用されることがほとんどであるが、水質・温度・流速・運転時間などわずかな違いにより、発生する腐食現象もさまざまである。中でも異種金属接触腐食は、現在でも度々発生している代表的な腐食現象である。しかしながら、建築設備配管を対象とした異種金属接触腐食に関する体系的な研究はこれまで行われていなかった。
本研究では、異種金属接触腐食の原因解明と腐食対策を提示することを目的として、(1) 水道水環境における金属材料の電位序列、(2) 異種金属接触腐食に対する面積比・距離・溶液伝導率の影響、(3) 亜鉛と鋼の電位逆転現象の発生要因と電位逆転により発生する局部腐食の防止方法を検討した。
なお、本報は「水道水中における建築設備配管の異種金属接触腐食に関する研究 (2010年博士論文) 」からの抜粋である。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.21-31

Galvanic Series of Seventeen Metals Conventionally Used in Tap Water With and Without Flow and its Comparison to that in Sea Water

Yasuki MATSUKAWA, Hiroshi CHUTA, Mamoru MIYASHITA*1, Miyuki YOSHIKAWA*2, Yoshikazu MIYATA*2, Shukuji ASAKURA*2

Galvanic series of seventeen metals often used in aerated tap water was determined by measuring corrosion potential. Experimental conditions were selected in considering such systems as water supply, water cooling, water heating, and water condensing. Galvanic series in sea water are easily obtainable. However, very few data on galvanic series in tap water are available so far in spite of its extraordinary importance in life lines. The authors found that the time changes of corrosion potential could be classified into 5 types depending on metals. Galvanic series in tap water was compared to that in sea water. The effect of flow is also discussed.
The main results in tap water are ;
(1) the potential of aluminum does not settle down,
(2) the position of stainless steel and copper alloys including pure copper is inversed by applying the flow,
(3) the potential of lead is more active than in sea water in contrast to the other metals,
(4) the potential differences between stainless steels and copper alloys including pure copper is much smaller than in sea water.

*1 Lemon Corporation
*2 Yokohama National University

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.33-38

設備機器の固体音対策事例 −温水ヒーターの固体音対策−

白木秀児

建築設備に関する騒音振動問題の中でも、設備機器の振動が音となって問題化しやすい「固体音」は重要であり、設備機器全般において入念な対策を必要とする。本報では温水ヒーターで発生した固体音の対策事例を紹介する。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.39-48

CFDにおけるアネモスタット型吹出し口の簡易近似法

村上有美*1、植田俊克、立野岡誠、馬田博貴

CFD解析を行う場合、構造格子系である直交格子は非構造格子系に比べ計算が速く、空調分野のように物体形状よりも熱対流により流れが左右される場合に適している。しかし、複雑形状を有するアネモスタット型吹出し口の再現は困難である。本報では、直交格子において実用的なレベルでアネモスタット型吹出し口の気流を再現する近似法を提案し、サイズ、メッシュ分割法などの依存性について検討および実験との比較を行い、本法の有効性を示す。

*1 株式会社レモン

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.49-54

組換えダイズ栽培用閉鎖型植物生産施設の開発
(第3報:CFD解析による果菜用空調方式の検討)

澤田和美、佐川美佳、東恵介、植田俊克

本研究の目的は、遺伝子組換えダイズ栽培用の閉鎖型植物生産施設の開発である。本報では数値流体力学解析 (CFD解析) を用いて、ダイズの群落内部を空調することができ、ダイズをはじめとする果菜類の栽培に適した、新しい空調方式を検討した。CFD解析の結果、新しい果菜用空調方式は、従前の空調方式と比較し、ダイズ近傍の環境制御が向上したことを確認した。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.55-63

医療・福祉施設の感染制御に関する研究 第1報 診察室の空気感染対策

森本正一、小林徳和、植田俊克、湯懐鵬、田辺新一*1、堤仁美*1、堀賢*2

隔離診察室でも室内の医療従事者は病原体に曝露されるため、空気感染対策にはN95マスクが必要である。しかし、感染症患者と判明していなければ、空気感染対策を実施せずに診察することになり、医療従事者が感染する危険が大きい。そこで、N95マスクの着用と同等以上の濃度低減効果が得られる空調換気の対策を検討した。まず、気流方式をCFD解析で絞り込み、フィルター付き吹出し口をプッシュ装置、フィルター付き吸込み口をプル装置として咳を局所排気する方法を実験で検討した。プッシュプル装置は、患者を挟んで設置すると、室内への咳の拡散を防止し、医療従事者の呼吸域の清浄度を低減できる。プッシュプル間隔は狭いほど効果が大きく、1.5m以下の場合に目標を達成した。次に、問診と検査に特化した診察室である問診室の対策システムを開発した。医療従事者と患者の間に設けたスクリーンを床から0.9mまで下げると、一般診察室と同程度の換気風量で目標を達成した。換気風量を隔離診察室と同程度まで増やすと、スクリーンを床から1.5mまで上げても目標を達成した。なお、本報は「医療・福祉施設における感染制御に関する研究 (第5,6報) ,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,2010」の内容をまとめたものである。

*1 早稲田大学
*2 順天堂大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.65-72

3次元計測システムの開発 ─システムの試作と性能評価─

酒本晋太郎、岸本洋喜、田中幸悦

設備工事における計測作業は、配管やダクトの工場製作のための採寸や、改修工事において既存躯体や設備の位置情報を取得するために実施されるものが多い。これらは躯体に記された基準線または建築躯体からの距離をコンベックスにより計測するものであるため、計測精度に限界がある。また高所での計測には足場が必要となるため、作業性の低下とコストの増加を招くとともに安全性が低下するという問題がある。筆者らは計測精度と作業性の向上のため、トータルステーションを用いた3次元計測システムを開発している。本システムの特徴は、トータルステーション単体では計測できない陰に隠れた部分を間接的に計測するためのデバイスを有することである。本報では、システムの構成および計測用デバイスの構造と計測原理について述べ、さらにシステムの性能評価実験として、トータルステーションの自己位置計測実験および計測用デバイスを用いた位置計測実験について述べる。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.73-78

3次元CADモデルに基づく墨出しシステムの開発

酒本晋太郎、岸本洋喜、嘉納成男*1、五十嵐健*1、藤井裕彦*2、大澤雄司*2、南健太郎*2、石田航星*1

建築物の改修工事では、竣工図の不備や紛失などにより既存躯体や設備について十分な情報が得られないこともある。このため、施工時には現場合わせが必要となり、生産性が低下するとともに多くの廃棄物を発生する要因にもなる。筆者らは、既存躯体や設備などを3次元レーザースキャナーで計測し、この情報に基づいて部材を工場製作し現場で取り付ける工法により、生産性の向上と加工による廃棄物をゼロとするエコ生産システムの開発を進めている。  本報では、本エコ生産システムを構成するサブシステムとして開発した部材の位置決め・墨出し機能について、3次元CADモデルから部材の取付け位置情報を抽出する方法、およびトータルステーションを利用した自動位置指示および墨出しの方法について説明し、さらにサブシステムの機能と精度確認のための実験結果について述べる。

*1 早稲田大学
*2 前田建設工業株式会社

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.79-86

可撓配管用継手のかしめ管理システムの開発

田中幸悦、岸本洋喜、酒本晋太郎

空調・衛生用配管工事において、施工性の良い可撓配管と専用継手を用いた工法を採用する現場が増えてきている。その多くは専用の工具を用いてかしめることにより取り付けるものである。現場合わせで配管の加工ができるため効率がよい工法であるが、管理が不十分な場合、かしめ忘れによる漏水事故を引き起こす恐れがある。本論文では、通信距離が長いUHF帯のICタグに着目し、かしめ機とICタグが連動して作業状態を管理する方法について提案する。本提案は、作業を行う際にはICタグを読み込まなければ始動できないようになっており、作業が終わると自動的にタグに施工時の情報を書き込むものである。作業後に、高出力RFIDリーダーを用いたスキャンシステムによって施工エリア内のICタグを一斉に読み取ることにより、未施工の継手があった場合でも発見できる。実際のビル建設現場への導入例と、フィールドテストから本システムの有効性を示した。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.87-92

人工環境下におけるダイズ栽培システムに関する研究
─明暗期条件がダイズの成長に及ぼす影響─

佐川美佳、横田昇平

現在、遺伝子組換え技術による医療用原材料などの有用物質生産に関する研究が進められている。なかでも、ダイズは子実の貯蔵タンパク質含量が高く、有用物質の効率的な生産に適した作物である。こうした背景のなか、我々は、遺伝子組換えダイズによる有用物質生産システムの開発を進めている。これまでに、人工環境下におけるダイズの成長性質について調べたところ、栄養成長に偏って過繁茂となる性質が明らかになった。そこで本研究では、明暗期条件による栄養成長の抑制を試みた。その結果、8hという短い明期条件によって、栄養成長量が抑制されることが明らかになった。しかし同時に、子実収量が減少することも示された。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.93-98

人工環境下におけるダイズ栽培システムに関する研究
─多段栽培を目指した草姿制御法の検討─

横田昇平、佐川美佳

本研究課題は、遺伝子組換えダイズによる有用物質生産システムの開発を目標としている。近年、遺伝子組換えにより医療用原材料となる有用物質 (タンパク質) を導入した植物の研究開発が進められている。ダイズは他の主要な穀物と比較して子実中の貯蔵タンパク質の含有率が高く、有用物質生産に適している。本報では、一般に光要求量が高いといわれているダイズを、蛍光灯を用いた棚で栽培し、子実を得ることが可能か、また多段栽培に適した小型の草姿に育成可能かについて、非組換えダイズを用いて検討した。その基礎的な実験結果を報告する。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.99-113

放射冷却パネルを利用した低温培養室の温熱環境の評価

立野岡誠、山田則行、佐々木恒、穴井俊博

岩手県八幡平市のリンドウ用低温培養室における温熱環境の要求条件は、室温10± 2 ℃、残風速 0.2m/s以下であった。省エネルギーの観点から、熱源を雪冷房システムとし、二次側には放射冷却パ ネルと最小風量の循環空調機を併用する空調システムを開発した。開発に際し、CFD解析と実大実 験による評価を行った。また、当培養室の建設後に、室温と風速を測定し、要求条件を満たす温熱環 境であることを確認した。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.115-121

数値流体シミュレーションによる最適環境予測技術

三國恒文

本報では、建築設備分野におけるCFD解析の活用状況を説明するため、弊社の現状の取り組みと、CFD解析対象の分類・割合や作業比率、解析環境等について報告する。また、冷却塔、実験施設、ホール、工場の解析例を用い、CFD解析による最適環境予測技術を紹介する。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.123.-129

木質系廃棄物からの水素製造装置の開発
─コーヒー粕を用いた高効率水素生産条件の検討─

塚本将朗、吉田敏晴、小島康夫*1

木質系廃棄物であるコーヒー粕を炭化し、その炭化物と水蒸気の水性ガス化反応により、乾燥コーヒー粕1kgあたり約400NLの水素が生産できる試算結果を得たが、冷ガス効率の低いことが課題であった。そこで本実験では、コーヒー粕を加熱したときの炭素損失を少なくする改良型水素生成フローを考案し、各工程の水素発生量を確認する基礎実験を行った。その結果、コーヒー粕の加熱温度を最適化することによって炭素損失を少なくでき、水素発生量を約800NL/kg−dry粕、冷ガス効率49%に増加させることができた。

*1 新潟大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.18, 2011 pp.131-140

新型VOCチャンバー (1m3) の開発

小林徳和、湯懐鵬、芝本光雄*1、河合義典*1

建築材料、家具、事務機器、家電製品などから放散される揮発性有機化合物 (VOC) やホルムアルデヒドの測定にはVOCチャンバー (大形チャンバー) が用いられている。2008年に電子機器からのアウトガスの評価方法が制定 (JIS C9913) されるなど、測定の対象が広がっている。新菱グループではこれまで多くのVOCチャンバーの納入実績があり、客先から高い信頼を得ている。しかし、これまでのVOCチャンバーはすべて現地施工タイプであるため、納期、コストの面で他社のユニット型チャンバーに対抗できない状況であった。そのため、筆者らはこれまで設置してきたVOCチャンバーの性能を維持しつつ、コンパクトで据付けが容易なユニット型の新型VOCチャンバー (1m3) を開発した。この新型VOCチャンバーはこれまでのVOCチャンバーの優れた性能を維持しつつ、工場製作により短納期・低価格を実現した。さらに、この新型VOCチャンバーを用いて安全に化学物質吸着建材などの性能評価を行うことができる化学物質発生装置を開発した。

*1 新菱工業株式会社

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