特許・論文

中央研究所報2013年 Vol.20

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.1-5

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第1報 改修概要と竣工後半年間のエネルギー消費量

塚本将朗*1、井手克則*2、東風谷哲朗*1、福井雅英

近年、建築物における省エネルギー化への要求が高まっている。また、建築物の改修においては、ストック&リノベーションへの期待が高まっている。このような背景から、環境・省エネモデルビルの構築を目指したSビルにおいては、既設の躯体を利用しながら省エネルギー化を図る計画が策定され、改修工事が行われた。本報では、「省エネルギーと快適性の両立」をコンセプトとしたSビルの改修の概要を示すとともに、改修前と改修後の半年間 (2011年10月〜2012年3月) の建物全体のエネルギー消費量の比較を示す。

*1 首都圏事業本部首都圏設計部
*2 技術統括部

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.7-12

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第2報 ソーラークーリングシステムおよび太陽光発電の暖房期における運転実績

福井雅英、井手克則*1、東風谷哲朗*2、渡邉雅史*2

省エネルギー化への要求が高まる近年、オフィスビルにおいても、さまざまな自然エネルギーの利用が試みられている。環境・省エネモデルビルの構築を目指したSビルの改修工事においても自然エネルギーの利用が検討され、ソーラークーリングシステムと太陽光発電が導入された。導入後の運転実績からエネルギー利用量を求め、計画時の試算値と比較したところ、ほぼ試算値に近い運転実績が得られ、自然エネルギーを利用した省エネルギー化の有効性が確認できた。

*1 技術統括部
*2 首都圏事業本部首都圏設計部

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.13-18

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第3報 高効率機器および外皮負荷削減策の概要と暖房期における効果

渡邉雅史*1、井手克則*2、塚本将朗*1、福井雅英

建築設備分野では多くの省エネルギー関連技術の開発が行われ、さまざまな高効率機器、熱負荷削減策が実用化されている。環境・省エネモデルビルの構築を目指したSビルの改修工事においても、高効率機器の利用を検討し、空冷ターボヒートポンプチラー、LED照明、高効率Hf照明を導入した。導入後の実績から、運転性能の妥当性、消費電力の削減を示す結果が得られた。また、外皮部材を見直し、いくつかの外皮負荷削減策を導入した。導入によって、外皮断熱性能の向上を示す結果が得られた。以上より、高効率機器の利用と外皮負荷削減による省エネルギー化の有効性を確認した。

*1 首都圏事業本部首都圏設計部
*2 技術統括部

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.19-26

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績 第4報 熱量按分システム

立野岡誠、井手克則*1、植田俊克、塚本将朗*2、山本誠

省エネルギーで快適な執務空間の実現に向けて、竣工後40年のSビルの改修工事を行った。Sビルは中央熱源方式であり、ゾーンごとに設置したセンサを用いてダンパを個別に制御させることとした。さらにゾーンごとに設定温度を個人単位の申請で変更可能とし、省エネルギーと快適性を両立するシステムを目指した。個人単位での設定温度変更は快適性の実現には有効であるが、過度にエネルギーを消費する懸念がある。よって、省エネルギーを実現するために、ゾーンごとのエネルギー消費量を見える化し、ビル利用者全員に公開することで、省エネルギーに対する意識の向上を図ることとした。ゾーンごとのエネルギー消費量を計測するためには、多くのセンサを必要とするため、制御機器の信号等、計測以外で用いる機器を最大限利用して低コストにエネルギー消費量を算出する熱量按分システムを開発した。

*1 技術統括部
*2 首都圏事業本部首都圏設計部

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.27-32

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第5報 二次側空調システムと省エネサポートシステムの概要

酒本晋太郎、植田俊克、福井雅英、井手克則*1

省エネルギーと室内環境の快適性の両立には、個別制御型の空調方式が有効である。従来の中央熱源方式による空調システムでは、細分化された空調エリアごとの個別制御が難しいため、近年は個別制御に適したビル用マルチパッケージ型空調システムが採用されることが多い。その5では、竣工から40年が経過した事務所ビル (Sビル) の省エネ改修工事において採用した、中央熱源方式を活かした個別制御型空調システム、および空調・照明統合制御システムについて述べる。さらに、ソフトウェアによる運転監視サポートシステムとして、Webサーバーを利用した“Smart Eco Office Controller”、および大型ディスプレイを利用したエネルギーの見える化システム“エコパネル”について概要を述べる。

*1 技術統括部

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.33-40

Laser Positioning System Using RFID Tag

Shintaro SAKAMOTO、Hiroyuki TOMITA、Naruo KANO*1、Takeshi IGARASHI*2

The authors have researched a production system using 3D CAD and 3D measurement technology for performing renovation work to increase the use of pre-cutting and pre-fabrication system. The purpose of this report is to develop a method for precise and quick positioning of pre-cut and pre-fabricated members. Conventionally, members have been positioned by referencing the marks described by preliminary manual measurements. However, these manual measurements make it difficult to improve the working efficiency and increase the accuracy of positioning. Moreover, they in-crease the possibility of human error as the drawings are referred to on site. The authors developed a system for positioning members by extracting their position data from a 3D-CAD model and positioning them automatically using a motor-driven total station. This system makes it possible to automate the process of identifying a member brought onto the construction site by reading the RFID tag placed on the member in the factory. This paper describes the configuration and function of this system and presents the results of field tests. Future research topics related to this system are summarized.

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.41-46

Push-pull Airflow to Prevent Droplet Nuclei Leakage

Shoichi MORIMOTO、Torahiko SAEKI、Huaipeng TANG、Toshikatsu UEDA、Satoshi HORI*1、Hitomi TSUTSUMI*2、Shin-ichi TANABE*3

Indoor air even in negative pressure room leaked out promptly, when the door was opened. We discussed the conditions of push-pull airflow system to prevent air leakage even if the door has opened. The experiments were conducted in a full-scale test room. A push-pull device was set between an anteroom and a corridor. Baby powder was used for tracer particle. It was produced in the corridor. The concentration ratio of the anteroom to the corridor was used for effect measurement. The target value was set to less than 5 % which is equal to the exposure quantity of a person in the corridor who wears a N95 mask. The target value was achieved when the push device was set to 1000 m3/h and 0.4 or 0.8 m wide. To double the width of the push device was more effective than to double the velocity of push air when it was compared by the same air volume of the push device.

*1 Department of Infection Control Science, Juntendo University
*2 Dept. of Human Environmental Science and Design, SWU
*3 Department of Architecture, Waseda University

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.47-53

T型配管合流部の混合特性に関する研究

三國恒文、深田賢、加治屋亮一*1

本報では、T型配管合流部の混合特性について可視化実験を行い、数値流体シミュレーション (以下、CFD解析) との比較検討を行った。実験では異なる温度の水流を合流し、合流後の温度分布を 測定することで混合度を判別した。CFD解析では合流直後の温度分布は実験結果と良い整合性を示 したが、下流になるに従い実験よりも均一化が速い結果となった。

*1 明治大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.55-62

たばこ臭気除去装置の開発および除去性能の評価

前田康博、佐伯寅彦、湯懐鵬、野口美由貴*1、水越厚史*2、柳沢幸雄*3

臭気物質を含むたばこ煙を除去するための、たばこ臭気除去装置 (以下、開発装置) を開発した。 開発装置の構成は、装置入口から粗じん用フィルター、活性炭フィルター、準HEPAフィルター、湿 式の臭気除去ユニットの順番からなる。除じんフィルターと活性炭フィルターからなる従来技術では 除去が難しかった代表的な臭気物質であるアセトアルデヒドを長期間除去するため、湿式の臭気除去 ユニットに、今回開発した薬液を滴下する湿式除去方式を採用した点に本装置の特長がある。この薬 液はアミノ酸を主成分とした薬品を調合したもので、化学吸着方式でアセトアルデヒドを除去する。 開発装置の除去性能を評価した結果、アセトアルデヒドは95%、浮遊粉じんは95%、トルエン、ニコ チンを含むTVOC (総揮発性有機化合物) は99%、アンモニアは98%が除去された。また、このとき の臭気濃度の除去率は99%であった。さらに、開発装置出口空気中の有機化合物をプロトン移動反応 質量分析計 (PTR−MS) などにより分析したところ、光触媒反応やオゾン分解のような酸化反応で 危惧される窒素酸化物などの新たな生成物がないことを確認した。

*1 成蹊大学 理工学部 物質生命理工学科
*2 東京都立産業技術研究センター
*3 開成学園

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.63-69

建築設備におけるステンレス鋼管溶接部の腐食性評価方法に関する一考察

松川安樹、津波古敦信

本研究では、建築設備で使用するステンレス鋼管の腐食に対する溶接熱影響について、その影響度合いを「ステンレス鋼の電気化学的再活性化率の測定方法 (JIS G 0580) 」と「ステンレス鋼の10% しゅう酸エッチ試験 (JIS G 0571) 」の両方式で評価した。その結果、溶接部の熱影響の状態を現場で評価する方法として、JIS G 0580は有効な手段であるが、測定結果の判断基準が不明確であるため、取り扱いが難しいことがわかった。今後の課題として、実環境におけるステンレス鋼管溶接部の腐食状況と電気化学的再活性化率の測定結果の関係を明確にする必要があることを提案した。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.71-79

軟化処理水および純水環境中における建築設備配管材料の腐食挙動に関する研究

津波古敦信、松川安樹

空調設備の運用におけるランニングコストの削減や環境への配慮から、冷温水や冷却水の補給水に井水を軟化処理した水や純水を使用する機会が増えている。しかし、これらの環境における金属材料の腐食挙動は明確でない。本研究では、軟化処理水および純水環境中における炭素鋼、亜鉛、ステンレス鋼、銅の腐食挙動を確認するために実験を行った。実験の結果、軟化処理水中では炭素鋼の腐食が、純水中では亜鉛の腐食が水道水中よりも促進されることがわかった。また、軟化処理水と純水に浸漬したステンレス鋼と銅は、本実験条件ではほとんど腐食しなかった。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.81-86

ダイナミック式氷蓄熱システムにおける高効率化

小川貴弘、田村記秀、山田育弘

ダイナミック式氷蓄熱システムにおいて安定した製氷運転を行うには、氷蓄熱槽から汲み上げる冷水を加熱し、冷水中に含まれる氷核を融解し完全に取り除く必要がある。従来方式の場合、氷核を融解するために必要な加熱量は、冷却熱量全体の20%を占め、システム効率を低下させる要因となっている。氷核融解加熱量を低減できれば、システム効率が向上し、省エネルギー化を実現できる。本研究では、氷核融解加熱量の低減を可能とする方式を考案し、実機により従来方式との効率を比較した。その結果、従来の氷核融解方式に対し、本方式では熱損失を60%以上削減できることを確認した。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.87-91

低湿度環境における人体からの発湿量低減方法に関する研究
第2報 ハーフスーツ型ミニエンの水分隔離性能評価

佐原亮、三國恒文、長澤雅俊、滝沢英二、三上秀人

ドライルームとよばれる非常に低湿度の環境では、最大の汚染源である作業者が、水分を嫌う対象の近傍で作業を行うことがあるため、その対策は非常に重要である。本報では、ハーフスーツ型ミニエンを試作し、ミニエン内が正圧と負圧の条件について水分隔離性能を評価した。その結果、ミニエン内が正圧の条件でミニエン内の発湿量が非常に少なく、ハーフスーツ型ミニエンは水分隔離方法として有効であることが分った。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報, Vol.20, 2013 pp.93-98

BIMを活用した設備計画・設計 −CFD解析−

深田賢、三國恒文

新菱冷熱では、全社の設計者がCFD解析を活用できる環境を整えることで、設計した空調システムの気流・温熱環境等のより高度な評価・検討を実施可能とした。しかし、解析に必要なデータ入力作業は繁雑であり、設計者にかかる負担が大きくなっているのが現状である。そこで、BIMを利用して業務を効率化するために当社の三次元CAD“S−CAD”へのアドインソフト“S−Pre”を開発した。
S−Preでは、三次元CAD上で入力した形状や部品名称、物性だけでなく、従来は設定が不可能であった制気口の風速等の境界条件を設定可能とした。当社本社ビルをモデルとしてS−Preを使用したところ、CFD解析にかかる工数が従来の3 割程度削減され、躯体形状の把握ミスによる手戻りも抑制された。現段階では形状作成時に一部修正が必要であるが、形状データの出力形式の改良やコンピュータの性能向上によりメッシュ数に制限がなくなれば、より利用しやすくなると考えられる。

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