特許・論文

中央研究所報2014年 Vol.21

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.3-8

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第6報 建物全体のエネルギー消費量の実績と熱源システムの運用実績

福井雅英、井手克則*1、東風谷哲朗*2、塚本将朗

近年、建築物における省エネルギー化への要求と建築物のストック&リノベーションへの期待が高まっている。このような背景から、Sビルにおいて既設の躯体を利用しながら省エネルギー化を図る改修工事が行われた。改修後の初年度における建物全体の年間エネルギー消費量は改修前から約33%削減され、年間CO2排出量は、改修前から約32%削減された。また、熱源システムの運用実績から、太陽熱エネルギーの利用率および各システムの運転モード別のシステムCOPを示すとともに、熱源システムの運用方法に関する課題を抽出した。

*1 技術統括本部 技術統括部
*2 首都圏事業部

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.9-17

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第7報 執務室の温熱環境と快適性評価

立野岡誠、井手克則*1、植田俊克、塚本将朗、福井雅英

竣工から40年が経過した事務所ビル (Sビル) の省エネ改修工事において、省エネルギーと執務環境の快適性を両立するために、除湿・冷却分離空調システム、およびスパン毎個別制御型空調システムを採用した。本報では、執務室の温熱環境の実測と快適性に関するアンケート調査を行ったので報告する。

*1 技術統括本部 技術統括部

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.19-24

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第8報 省エネサポートシステムの運用実績と考察

酒本晋太郎、井手克則*1 、植田俊克、福井雅英

竣工から40 年が経過した事務所ビル (Sビル) の省エネ改修工事において、省エネルギーと執務環境の快適性を両立するため、執務者とビル設備とのインターフェースとして開発したWebアプリケーション「Smart Eco Office Controller」を導入した。本報では、このWebアプリケーションによる省エネサポートシステムの概要と竣工後1年間の運用実績を示すとともに、執務者へのアンケート結果について考察する。

*1 技術統括本部 技術統括部

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.25-32

潜熱・顕熱分離空調システムの快適性と省エネルギー性の検討

金子寛明*1、花崎広隆*2、藤井謙*2、福井雅英

「省エネルギーと快適性の両立」をコンセプトとした改修工事が行われたSビルでは、基準階の執務室に潜熱・顕熱分離空調システムが導入された。導入後の夏期における室内の温湿度環境データおよび執務者を対象としたアンケート結果から、室内設定温度が28.0℃の環境下であっても除湿不足による不快感が軽減されている傾向が確認できた。また、導入後の処理熱量と送風量について、室内設定温度を26.0℃とする一般的な空調システムの試算値と比較したところ、送風量の削減が期待できることが示された。さらに、試算により、ピーク時間と年間の消費電力量を比較したところ、潜熱・顕熱分離空調システムの導入により、ピーク時間の消費電力量低減と年間の省エネルギー性向上が期待できることが示された。

*1 都市環境事業部
*2 東京電力株式会社

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.35-44

亜鉛と鋼の電位逆転現象による亜鉛めっき鋼管の局部腐食事例とその原因解析
第1報 研究の歴史と事例解析

松川安樹、宮田義一*2、宮下守*1、朝倉祝治*3

亜鉛めっき鋼管は、その防食性・施工性・汎用性・コストの利点から、冷温水や冷却水等、現在でも多くの配管系に利用されている。しかし、亜鉛と鋼の電位逆転が原因と思われる局部腐食による漏水事故がたびたび発生している。亜鉛と鋼の電位逆転現象については、約70年前から研究されているが、その原因は明らかでない。本研究では、これまで行われた研究の整理と、腐食トラブルの発生状況について詳細な調査を行った。調査の結果、亜鉛の電位逆転現象は水質の影響で生じることが最新の見解であるが、その詳細についてはまだ不明な点が多いこと、および漏水が生じた亜鉛めっき鋼管では、亜鉛と鋼の電位逆転現象が実際に生じていることを明らかにした。そして、これらの結果を基に、腐食原因の解明と対策の実施に向けた今後の研究課題を提案した。

*1 元新菱冷熱工業株式会社
*2 元横浜国立大学大学院
*3 横浜国立大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.45-54

亜鉛と鋼の電位逆転現象による亜鉛めっき鋼管の局部腐食事例とその原因解析
第2報 亜鉛電位の貴化現象の解析と腐食対策の検討

松川安樹、宮田義一*2、宮下守*1、朝倉祝治*3

冷温水や冷却水配管に使用した亜鉛めっき鋼管に、局部腐食による漏水トラブルが発生することがたびたび報告されている。この原因として、亜鉛と鋼の電位逆転現象が考えられているが、そのメカニズムと腐食対策は明らかにされていない。前報では、過去に行われた研究の歴史と筆者らが経験した腐食事例の解析結果から、水質の影響で亜鉛の電位が貴方向に変化することを示した。本研究では、亜鉛の電位が貴化する機構を電気化学的な測定により明らかにした。そして、これまでの研究で得た結果を基に亜鉛めっき鋼管に局部腐食が発生する要因を推察し、漏水トラブルを未然に防ぐ方法を提案した。

*1 元新菱冷熱工業株式会社
*2 元横浜国立大学大学院
*3 横浜国立大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.55-60

医療・福祉施設の感染制御に関する研究
第3報 多床室の病原体濃度低減の検討

森本正一、湯懐鵬、田辺新一*1 堤仁美*2、堀賢*3

病気や治療で免疫力の低下した患者は結核を再燃することがあるが、すぐに診断して隔離するのは困難である。この場合、とくに4床室では、医療従事者に加えて同室の患者に対しても感染が拡大する危険がある。そこで本研究では、4床室の感染リスクを低減するため病原体濃度の低減方法を検討した。まずCFD解析により換気回数と病原体濃度の関係を検証したところ、換気回数を増やすほど病原体濃度を低減できることが確認できた。次に実験により間仕切りと垂れ壁の効果を検証したところ、これらの対策だけでは大きな効果を得られなかった。そこで壁と間仕切りを利用して患者の呼吸域をプッシュプル気流で局所排気したところ、発生源以外の患者の呼吸域で病原体濃度を1/10以下に低減でき、4床室の感染リスクを低減できることが明らかとなった。しかし、発生源の患者が動くことで病原体濃度の低減効率は大きく変わると予想されるため、今後は患者が動いても病原体の拡散を抑制できる技術の開発が必要である。

*1 早稲田大学
*2 昭和女子大学
*3 順天堂大学大学院

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.61-64

オープンプロトコルによる多棟管理システム

田中幸悦、酒本晋太郎、上原豊史*1、青木智司*1、石川晃啓*2

近年、省エネ手法のひとつとしてBEMSが注目されている。BEMSは、ビルのエネルギー使用量を抑えるために、見える化による省エネ意識の啓発、遠隔制御による設備の最適制御などを行うものである。インターネット技術を利用したBEMSシステムは既に多くのベンダーから提供されているが、ほとんどがベンダー独自のプロトコルを用いている。そのため、システムの更新の際には、既存システムの納入ベンダーに頼らざるを得ず、ベンダー主導の仕様になる可能性がある。
これに対し、開示されたオープンプロトコルであれば、ベンダーを限定する必要がなく、オーナー主導で構築が可能となる。また、複数のベンダーによるシステムの共存も可能である。筆者らは今後オープン化が進むと考え、Webサービスを用いた代表的な三つのオープンプロトコル (BACnet/WS,oBIX,IEEE1888) を用いた多棟管理システムを構築した。構築システムは、中小規模の一般事務所ビル、テナントビル、研究施設、工場などを含んだ7拠点を接続し、使用電力量のリアルタイム表示、PACおよび照明のスマートフォンによる遠隔監視・操作、デマンド監視による、警報メール送信、PACの出力制御機能を実現した。

*1 計装エンジニアリング事業部
*2 株式会社シスプロ

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.65-70

設備機器の固体伝搬音対策事例 −ポンプ管路の固体伝搬音対策−

白木秀児

建築設備の騒音・振動対策のうち、設備機器の振動が音として問題となる「固体伝搬音」は重要な項目のひとつであり、入念な対策を必要とする。高い圧力で運転するポンプ管路で発生した固体伝搬音の対策としてゴム継手を複数設置した結果、固体伝搬音が低減され対策方法の有効性が確認された。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.71-76

低湿度環境における人体からの発湿量低減方法に関する研究 (その3)
−二重チャンバー方式ミニエンの水分隔離性能評価−

長澤雅俊、佐原亮、三上秀人

リチウムイオン二次電池等の製造プロセスでは、非常に低湿度の環境であるドライルームが必要である。ドライルーム内では人体からの発湿が最大の汚染源であるため、製品と作業域を隔離する等の対策が必要である。本研究では、人体からの発湿対策として考案した二重チャンバー方式の水分隔離性能の評価を行った。その結果、二重チャンバー方式を用いることで、負圧条件で低湿度の環境を維持できることがわかった。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.77-83

病院におけるホルムアルデヒド対策

穴井俊博、黒田利広*1、前田康博、湯懐鵬、岩田仁*2

2008年の特定化学物質障害予防規則の改正に伴い、ホルムアルデヒドの管理濃度が0.1ppmと厳しくなり、臓器の組織固定等で大量のホルマリンを使用する医療機関では、作業環境の改善に向けた取り組みが行われている。
地方独立行政法人岐阜県総合医療センターでは、作業環境の改善と環境負荷の低減を目的として、切出室の対策工事を行った。給排気対策として、換気量の増強、そしてソックスダクトと局所排気装置を用いた気流方式を採用した結果、室内のホルムアルデヒド濃度は管理濃度を大幅に下回り、作業環境の改善が図れた。また、排気用ホルムアルデヒド除去装置を設置した結果、ホルムアルデヒド除去装置の出口濃度は外気レベルとなり、環境負荷の増大と二次汚染を防止できた。

*1 名古屋支社
*2 地方独立行政法人岐阜県総合医療センター

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.85-95

たばこ臭気除去装置の開発および除去性能の評価
−模擬オフィスに設置した喫煙ブースの評価−

前田康博、佐伯寅彦、深田賢、湯懐鵬、野口美由貴*1、水越厚史*2、柳沢幸雄*3

たばこ臭気除去装置 (以下、除去装置) を備えた喫煙ブースを模擬オフィス内に設置し、除去装置によるたばこ煙成分および臭気の除去性能を確認するとともに、除去装置によるたばこ煙処理空気を模擬オフィスに排出した際の空気質を評価した。喫煙ブース内で除去装置を稼働させ8本のたばこを連続的に同時燃焼し、模擬オフィスの複数点において、たばこ煙の物質濃度を測定した結果、各測定点におけるたばこ煙成分濃度は、たばこ燃焼前に比べて大きな変化はみられず、除去装置を備えた喫煙ブースの分煙効果を確認した。また除去装置で除去できない一酸化炭素についても、模擬オフィス内の換気設備を稼働させることで速やかに低減できた。  次に模擬オフィス内の排気口位置と室内の測定物質濃度分布の関係を検討した。その結果、模擬オフィスの気積に対し、十分な換気量を確保した条件下では排気口の設置位置に関係なく、均一かつ厚生労働省による室内濃度指針値等の基準値以下の濃度環境を保たれることがわかった。  また、実証実験における条件を境界条件としてCFD (Computational Fluid Dynamics、数値流体力学) 解析を実施し、その精度を検証した。結果、実験とCFD解析の物質濃度がよく対応し、喫煙ブースを計画するうえでCFD解析が有効であることを確認した。

*1 成蹊大学
*2 近畿大学
*3 開成学園

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.21,2014 pp.97-103

設備工事におけるICT活用事例

酒本晋太郎

近年のICTの普及、発展はめざましく、ビジネスにイノベーションを起こす手段として欠かせない存在となった。建設業においても、BIMに注目が集まるとともに、施工現場でのICT活用の取り組みが始まっている。筆者らは、ICTを利用した設備工事の合理化や省力化を図るシステムの研究開発に取り組んでいる。本報では、スマートフォンやタブレットPCなどのスマートデバイスとクラウドコンピューティングを活用した施工管理アプリケーションソフトウェア、および、レーザーを利用した3次元計測技術について、現場での活用事例とあわせて紹介する。

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