特許・論文

中央研究所報2017年 Vol.24

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp1-7

省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第12報 エネルギー消費量の実績と省エネサポートシステムの評価

塚本将朗、井手克則、植田俊克、福井雅英

Sビルは、竣工から40年後の2011年に、「省エネルギーと快適性の両立」を目指し改修工事が行われた。改修後4年目における建物全体の年間エネルギー消費量は、改修後3年目と比較して約8.4%削減され、年間CO2排出量は、改修後3年目より約9.0%削減された。基準年となる2009年度と比較すると、年間エネルギー消費量は約42.5%の削減となり、改修後5年目に40%削減という最終目標を1年前倒しで達成した。本報では、エネルギー消費量の実績と、Sビルに導入された省エネサポートシステムの効果を報告する。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp9-13

たばこ煙および臭気除去システムの開発
事務所ビルの喫煙室への導入事例

佐伯寅彦、岩間裕樹、穴井俊博、湯懐鵬、山北桜子、坂本裕、津島健、野口美由貴*1、水越厚史*2、柳沢幸雄*3

たばこ臭が非喫煙空間に漏洩していた喫煙室において、給気量の調整とたばこ煙専用の臭気除去装置を設置する対策を実施した。浮遊粉じん濃度を測定した結果、喫煙室内および隣接する廊下ともに、対策後の浮遊粉じん濃度は大きく低下したことがわかった。さらにメンテナンス1か月後と3か月後の空気質を測定し、喫煙室から廊下への浮遊粉じんおよびアセトアルデヒドの漏洩防止効果が維持されていることを確認した。

*1 成蹊大学
*2 近畿大学
*3 東京大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp15-26

アニオン交換処理水を用いた建築設備配管の腐食抑制方法
その1 研究の背景と腐食抑制方法の概要

松川安樹、津波古敦信、中村勇二、朝倉祝治*1

建築設備配管に発生する腐食は、近年、異種金属接触腐食や潰食など原因が明らかな事象は減少傾向にある。しかし、亜鉛めっき鋼管や銅管に発生する局部腐食は、原因が明確でないため、現在もたびたび発生している。過去の事例から、局部腐食は、水張り時の水質や滞留時間の影響で生じるわずかな腐食が「腐食の起点」となり発生するものと考えている。本研究では、水張り時にアニオン交換処理水を用いることで「腐食の起点」をなくし、局部腐食を抑制する方法を提案した。

*1 横浜国立大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp21-26

アニオン交換処理水を用いた建築設備配管の腐食抑制方法
その2 炭素鋼鋼管と亜鉛めっき鋼管に対する腐食抑制効果

津波古敦信、松川安樹、中村勇二、朝倉祝治*1

本研究では、配管施工後の水張り・フラッシングの段階でアニオン交換処理水を利用して、炭素鋼鋼管や亜鉛めっき鋼管に発生する局部腐食を抑制する方法を検討するために実験を行った。実験の結果、炭素鋼鋼管と亜鉛めっき鋼管に対するアニオン交換処理水の腐食抑制効果を確認できた。

*1 横浜国立大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp27-32

低湿度環境における樹脂材料の水分発生量評価

長澤雅俊、三上秀人、佐原亮、尾形甫

本研究では、低湿度環境用のミニエンバイロメントの省エネルギー化を目的として、アクリル透明樹脂、ポリカーボネート透明樹脂、硬質ポリ塩化ビニル透明樹脂の三種類の樹脂材料の低湿度環境におけるアウトガス速度の挙動および周囲湿度の影響について評価した。その結果、アウトガス速度の減衰が最も早いのは硬質ポリ塩化ビニル透明樹脂で、外部湿度の影響を受けたのはアクリル透明樹脂のみであった。筐体に、硬質ポリ塩化ビニル透明樹脂を用いることで、低湿度環境の立上げ時間を短縮し、供給風量を削減できる可能性がある。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp33-39

熱源・空調システムの最適制御技術の導入に向けた研究
第3報 冷却塔ファン周波数の設定値最適化とエネルギー削減効果の試算

矢島和樹、植田俊克、前田幸輝、福井雅英、近都州彦、赤司泰義*1、桑原康浩*2

本研究は、建物の熱源・空調システム全体のエネルギー消費量を最小化する「最適制御技術」の確立を目的としている。
本報では、エネルギーシミュレーションツールであるLCEMツールを用いて、冷却塔ファンインバータ制御の熱源システムにおける最適な運用方法を検討した。LCEMツールによるケーススタディの結果から、「外気湿球温度」と「熱源機の負荷率」の二つの計測値から最適な冷却塔ファン周波数を求める関係式を導出した。導出した関係式を用いて制御することで、年間エネルギー消費量の削減効果は、吸収式冷凍機のシステムで4.3%、インバータターボ冷凍機では24.5%あると試算された。

*1 東京大学大学院
*2 エム・ティー・ディー (株)

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp41-47

大規模オフィスでの中温冷水を利用した高効率熱源・空調システムに関する研究
第9報 熱源最適運転支援システムの運用実績

福井雅英、大森一郎*1、浅利直記*1、野村勝*1、嶋田泰平*2、佐々木真人*2、宮﨑久史、桐生拓馬、矢島和樹

大規模テナントオフィスビルは、省エネルギーなど社会ニーズへの先導的な取り組みが不可欠である。本研究では、2014年6月に開業したTビルを対象に、従来の室内環境を維持しながら、熱源・空調エネルギーを削減する運転手法を追求した。
本報では、Tビルにおいて、「インバータターボ冷凍機の部分負荷特性の有効活用」と「蓄熱槽のクッションタンク利用」に着目して構築した熱源最適運転支援システムの概要について述べた。また、運用実績を分析し、システムの効果、妥当性、課題を示した。

*1 森ビル株式会社
*2 株式会社日本設計

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp49-59

空気塊による空調システムの研究
その1 数値流体シミュレーションによる連続した渦輪の検討

立野岡誠、三國恒文、五十嵐瞳

一般的に、大空間において空気調和の吹出口はノズルを用いる。しかし、目的地に届く前に、吹出口からの気流は多くが拡散する。一方、渦輪は質量と運動量を輸送する能力が高い。本研究の目的は、渦輪を連続発生させて、空気調和に応用することである。本報告では、連続発生させた渦輪を、数値流体シミュレーション (以下、CFD) で解析した結果について報告する。

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp61-67

空調設備におけるCFDを用いた流体音解析に関する研究
(第1報) CFDによる分岐管・合流管の流れ解析

土志田卓、三上秀人、三國恒文、御法川学*1

空調設備において、流体音の低減は重要な課題である。流体音は、空調用のファンやポンプ以外にも、管路や弁など様々な部材で発生し、問題となることが多い。本報では、流体音源となる渦や剥離が発生しやすい分岐部および合流部の流れに着目し、CFDを用いた流体音予測の有効性について検討した。初めに、渦や剥離が発生する流れをCFDで高精度に解析するため、実験による風速分布との整合性を比較検討した。次に、CFDによる非定常流れの解析結果から音圧レベルを計算し、周波数特性および音圧の増加量について評価した。定量的な予測については課題が残るが、流体音の定性的な傾向および流体音源の分布については、概ね再現できることを確認した。

*1 法政大学

新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.24,2017 pp69-74

花粉の室内空気汚染対策に関する基礎研究
-外気中花粉濃度とその測定法の評価-

湯懐鵬、藤田俊雄

季節性の汚染物質として花粉を取り上げ、既存研究のレビューを含めスギ花粉の外気濃度の実測データを紹介したあと、フィルタろ材の除去効果、花粉測定法の評価結果を報告する。特に花粉測定法の評価については、外気および花粉曝露室においてKH-3000、KC-20とM/Gサンプラーを用いて同時測定を行った。各測定法の相関性および測定値の補正の要否など使用上の注意点について述べる。

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