省エネルギー・省資源化の取り組み
新菱冷熱は、当社が担当する施工物件の設計・施工・維持管理などの事業活動において、さまざまな技術を用いて省エネルギー・省資源化に取り組み、温室効果ガス排出量の抑制に貢献しています。
世界最大の空調国際学会 世界最優秀賞
新菱冷熱、株式会社三菱地所設計、学校法人芝浦工業大学が設計・施工・検証に携わった新菱神城ビルが、空気調和に関する世界最大の国際学会であるASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)の2023 ASHRAE Technology Awards新築オフィスビル部門において、世界最優秀賞(FirstPlace)を受賞しました。
新菱神城ビルでは、変風量コアンダ空調システム、ダイナミックレンジ放射空調システムなど、開発した脱炭素技術を数多く導入しています。これらの技術を、CFD解析・実大実験・フィールド試験を通じて効果検証し、新たな技術として確立しました。
一次エネルギー消費量は、運用初年度で基準値と比較して75%削減しており、大幅な省エネルギー化を実現しました。竣工後も表計算ソフトと連携した熱源最適制御システムを新たに開発・導入するなど、継続的な温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。新菱神城ビルで得られた技術や知見を社会に提供し、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
建物環境性能の評価において、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)最高ランク★★★★★、LEED v3 GOLD認証を取得しています。

外観

*コンセント消費電力など基準一次エネルギー消費量に含まれない電力を除く

7年半の居ながら大規模改修工事
東京都庁は、約2万人近い都職員が働く大規模な行政庁舎です。1991年の開庁から年数が経過し、設備機器の本格的な更新時期を迎えたため、大規模改修工事が行われました。
新菱冷熱は、第一本庁舎の空調設備の施工を担当し、高効率機器の導入、大温度差空調システムなどの構築に貢献しました。室内の温熱環境の改善や送水・送風に係る搬送動力の削減等により、室内環境の向上と省エネルギー化を両立しています。第一・第二本庁舎の一次エネルギー消費量は、2000年度(改修前)に対して、2021年度は63%(試算値)まで削減し、空気調和・衛生工学会の定めるZEB Oriented相当を実現しました。
工事にあたっては、都民サービスなどの行政機能を停止させずに工事を進めるため、綿密な調整のうえ、2フロアごとに順次、移転・改修し、7年半以上の長期間の改修工事を実施しました。
東京都庁第一・第二本庁舎は、超高層建築における大規模改修とZEB化によるカーボンニュートラルへの貢献が高い評価を受け、空気調和・衛生工学会 第11回特別賞リニューアル賞を受賞しました。

外観

風土に根付いた環境設備計画
2020年3月に竣工した福岡県嘉麻市新庁舎は、遠賀川沿いに建つ彫刻的な矩形の建物です。新菱冷熱は、空調・衛生・消火設備工事の施工を担当しました。
嘉麻市の風土特性である、夏場でも夜間の外気温が低下する気候条件や変わりやすい風向きなどの自然環境との共生を考慮して、パッシブシステムとアクティブシステムを組み合わせました。また先進的な省エネルギーシステムも導入しています。
夜間の低い外気温を利用して冷水を蓄熱し、昼間は蓄熱槽からの冷水供給と空冷チラーによる中温冷水を供給する高効率な熱源システムを構築しています。また、外気冷房、自然換気・ナイトパージ、簡易エアバリアの切り替え可能なペリメータシステム、搬送動力を低減した床吹出空調システムなども採用し、室内環境の快適性と省エネルギー性の向上を図っています。
これにより、同規模の標準的な庁舎と比較して、設備全体で約49%*、空調設備のみでは約61%*の年間一次エネルギー消費量の削減を実現しました。
* 新庁舎に導入したBEMSによる計測値

外観

ゼロ・エネルギー・スクール
岐阜県瑞浪市にある瑞浪北中学校は、市内の公立中学校3校を統合し、次世代の学校施設や環境教育のあり方について情報発信することを目指して建設されました。新菱冷熱は、機械設備の施工を担当し、地中熱や太陽熱などの自然エネルギーを利用したシステムを構築しました。
当施設は、建設地の歴史的遺産「登り窯」を利用した配棟計画による自然換気、クールヒートトレンチによる外気取り入れなど、自然と共生可能な環境技術を採用し、さらに五感に訴える環境プラットフォームにより、生徒たちの地球環境保護意識の高まりを醸成する試みを行っています。継続的なエネルギーマネジメントの実践が可能な施設であり、エネルギーの需要と供給量に関する分析を行ったところ、竣工1年目の環境性能評価ではZEBを実現しました。CASBEE建築(自己評価)ではSランクとなりました。
こうした脱炭素の基盤となる重点対策の創意工夫は、今後の学校建築におけるロールモデルとして高い評価を受け、第36回空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞を受賞しました。

外観写真

施工のワークフロー変革
設備工事では、機器や配管、ダクト、制気口などの器具類を取り付ける際に、取り付け位置を現場の床面に記していきます。
複数の作業員が施工図を見ながら手作業で行うため、多くの手間と時間を要していました。
新菱冷熱が開発した施工図描画ロボットは、機器や器具類の取り付け位置をはじめ、施工図に記載されたさまざまな情報を自動で正確に記すことができます。これにより、施工図を確認しなくても施工できるため、適切な施工管理や作業指示が可能になりました。手戻り作業の回避や残材などの廃棄物の削減、運搬の効率化にもつながるため、生産性向上と温室効果ガス排出量削減に貢献しています。
こうした建設現場における施工のワークフロー変革が、作業環境をデザインする取り組みとして高い評価を受け、一般社団法人建築設備綜合協会から第21回環境・設備デザイン賞(第I 部門:設備器具・システムデザイン部門)優秀賞を受賞しました。

施工図描画ロボット

描画後の床
