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2022.2.28最先端システムを整備した蚕(かいこ)飼育施設「まゆラボ」運用開始
~オープンラボで新蚕業に挑戦~

当社は、新システムを搭載した大量飼育装置、新機能を付加した自動毛羽取り装置、新開発の自動繭(まゆ)切り装置など、最先端スマート養蚕システム※1を整備した蚕飼育施設「まゆラボ」(愛称)を当社中央研究所(茨城県つくば市)に新設し、運用を開始しました。
当社は、遺伝子組換え蚕の飼育も可能な「まゆラボ」を「新蚕業」※2の開発に取り組む拠点と位置づけ、蚕を効率よく飼育する最先端システムの実証試験を行いながら、他企業と共同で繭や蛹(さなぎ)を用いた新製品の開発を行います。また、最先端システムを試用したい企業には、オープンラボとして「まゆラボ」を貸し出す予定です。
当社は「まゆラボ」の運用により、資源・環境対策に活用できる蚕のバイオテクノロジー基盤を、「新蚕業」創出(医療、化粧品、食品分野など)へと展開していきます。

1.「まゆラボ」について

掃き立てから飼育、収繭・毛羽取り、繭切開・蛹分離までの一連の作業を行うことができる施設です。
各室はクリーンルーム仕様になっており、上蔟室は温度18~30±1℃、湿度30~60±5%RHの範囲でコントロールができます。また、-60℃まで冷却可能なディープフリーザーを配備しているので、遺伝子組換え蚕の不活化が可能になります。

<主な構成と仕様、設置装置など>

  • 飼育室、上蔟室、収繭・繭切り室で構成
  • ISOクラス7のクリーンルーム
  • 拡散防止措置(P1Aレベル、カルタヘナ法に基づく研究第二種使用に対応)
  • 成育センシングシステム搭載大量飼育装置※3、粉塵飛散防止機能付き自動毛羽取り装置※4、自動繭切り装置※5:1台ずつ設置
  • 掃き立て用恒温インキュベーター、上蔟棚、ディープフリーザーなど

2.背景説明

①.「新蚕業」取り組みの経緯
蚕は寒さに弱く、また、水分でむくんだ蚕からは良質な生糸が取れないため、養蚕には微妙な温度・湿度調節が求められます。2014年、当社の高度な空調技術を活用し、農業(養蚕業)を工業(新蚕業)に変革しようと始めた研究が、「遺伝子組換えカイコによる有用物質生産装置の開発」でした。
その後、当社は、農林水産省委託研究「蚕業革命による新産業創出プロジェクト」にも参画し、より高度なスマート養蚕システムを開発してきました。
「まゆラボ」の最先端システムは、本プロジェクトの開発成果であり、その一部は2022年3月13日~3月15日に開催される蚕糸・昆虫機能利用学術講演会(日本蚕糸学会第92回大会)で発表される予定です。

②.政府の「バイオ戦略」との関わり
政府は、2019年6月、「バイオ戦略2019」※6において、「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現する」と発表。2020年6月には、「バイオ戦略2020」※7において、「バイオエコノミーの推進は世界各国においても着実に推進しており、感染症拡大の収束に向けた対応及び今後の経済回復の両面においてますます重要」と発表しました。
当社は、2021年10月から、内閣府官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)令和3年度新規施策「動物用医薬品をターゲットとしたバイオ製剤供給技術の開発」に参画し、「経口ワクチン等に用いる繭の乾燥・切開技術等の検討」を実施しています。

【参考】

※1スマート養蚕システム
養蚕家の高齢化に伴い失われようとしている、日本の養蚕業の高度な飼育管理技術、及びノウハウを工業的に再現した当社独自の新たな物質生産システムで、バイオ医薬の原材料生産などに活用できます。幼虫飼育から繭処理までの一連の工程を網羅します。
https://www.shinryo.com/tech/silkworm.html

※2新蚕業
2019年9月13日、農林水産省が策定した「新蚕業プロジェクト方針」に記載されているシルクを利用した新たな市場のこと。
https://www.maff.go.jp/j/press/seisan/tokusan/190913.html

※3成育センシングシステム搭載大量飼育装置
大量飼育装置(MayuFacture®;特許第6134020号、特許第6134021号)*に、新開発の成育センシングシステム(特許第6968925号)を搭載したもの。
従来、作業者が目視で判断していた停食開始時期を、成育センシングシステムが自動で判定することにより作業が省力化でき、かつ作業者の熟練度によらずに蚕の成育速度を揃え、繭の歩留まりや品質の均一性を保つことが可能です。この飼育装置では、1回あたり33,600頭、年間最大10回の飼育ができます。
* 装置内部の電動で回転する多段棚に飼育用のケージを配置し、各棚を蚕の育成に適した均一な温湿度に維持する装置

※4粉塵飛散防止機能付き自動毛羽取り装置
自動毛羽取り装置(MayuClear®に、粉塵飛散防止機能としてHEPAフィルターを取り付けた「まゆラボ」専用仕様です。1時間に最大54,000個の繭処理が可能です。
⁑ ボール紙製で格子状の蔟(まぶし)から繭を1つずつ取り外し、繭の周囲の細かい毛羽を取り除く装置

※5自動繭切り装置
新蚕業で求められる繭は、お湯で煮ずそのままの状態で切り開き、蛹を確実に取り除く必要があります(従来は、お湯で煮た繭から糸口を見つけて、糸巻棒に糸を巻き付けていました)。自動繭切り装置は、繭を切開して蛹を取り出す一連の工程を全自動化した装置です。

※6バイオ戦略2019
2019年6月11日、統合イノベーション戦略推進会議が決定したバイオ戦略。
https://www8.cao.go.jp/cstp/bio/bio2019_honbun.pdf

※7バイオ戦略2020
2020年6月26日、統合イノベーション戦略推進会議が決定したバイオ戦略。
https://www8.cao.go.jp/cstp/bio/bio2020_honbun.pdf

  • 「まゆラボ」内での給餌の様子

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