中央研究所報2015年 Vol.22
新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.22,2015 pp1-6
省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第9報 改修後2年目における省エネルギーの取組み
福井雅英、井手克則、植田俊克、塚本将朗
近年、建築物における省エネルギー化への要求と建築物におけるストック&リノベーションへの期待が高まっている。このような背景から、Sビルにおいて既設の躯体を利用しながら省エネルギー化を図る改修工事が行われた。改修後2年目の建物全体の年間エネルギー消費量は、改修後1年目から約1.7%削減され、年間CO2排出量は、改修後1年目から約1.6%削減された。また、改修後2年目に実施した主な省エネルギー強化の取り組み (熱源システムの運用改善、照明方式の変更、省エネルギー啓発活動) について効果を確認した。
新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.22,2015 pp7-14
省エネ改修ビル (Sビル) における運転実績
第10報 二重サッシ化およびサーバー室空調改善後の運転実績
塚本将朗、井手克則、植田俊克、立野岡誠、福井雅英
Sビルは竣工から40年後の2011年に「省エネルギーと快適性の両立」を目指し、改修工事を行った。竣工後も省エネルギー効果を検証し、エネルギー削減率40%の達成に向けた省エネルギー対策強化と運用改善に取り組んでいる。本報では竣工後2年目に行った、既設窓の二重サッシ化とサーバー室の空調改善について、その概要と効果を報告する。
新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.22,2015 pp15-21
Reduction of Droplet Nuclei in 4 Bed Room
Shoichi MORIMOTO、Huaipeng TANG、Shin-ichi TANABE*1、Hitomi TSUTSUMI*2、Satoshi HORI*3
If a patient is diagnosed with an airborne infectious disease, medical workers can use airborne precautions and isolate the patient in a negative pressure room. However, if the patient has not been diagnosed with the airborne disease, then the medical workers cannot use precautions due to the unwieldy nature of the N95 respirator as well as Powered Air Purifying Respirators (PAPR) being expensive. Furthermore, the patient may share a 4-bed room with compromised patients. In this study, we discussed the reduction methods of droplet nuclei concentration to reduce the infection risk in 4-bed rooms. We conducted the experiments in a full-scale test room. Air supply diffusers were on the ceiling, a square cone diffuser was in the center and four linear slot diffusers were on the step side of each bed between a wall and a partition wall. The largest drop in concentrations occurred with smaller air volumes for the square cone diffuser and larger air volumes for the linear slot diffusers. The concentrations were reduced further by using a rolling screen.
*1 Department of Architecture, Waseda University
*2 Department of Environmental Science & Design, Showa Women's University
*3 Department of Infection Control Science, Juntendo University
新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.22,2015 pp23-31
熱源・空調システムの最適制御技術の導入に向けた研究
第1報 冷却水系統における最適制御手法の検討とエネルギー削減効果の試算
矢島和樹、植田俊克、前田幸輝、福井雅英
本研究は、エネルギーシミュレーションツールを用いて、制御パラメータが熱源・空調システムのエネルギー消費量に与える影響について分析・評価を行い、その結果を基に熱源・空調システムに関する最適制御技術の確立を目的とするものである。
本報では、冷却水系統における制御の効率化を目指し、LCEMツールを用い、冷却水温度や冷却水流量の最適な設定値について検討した内容を示す。検討した結果、直焚吸収式冷温水機の熱源システムにおいて、外気湿球温度を基に冷却水入口温度の設定値を決定する近似直線を導いた。さらに、その近似直線を用いた制御方法により、冷却水入口温度一定の制御と比較してエネルギー消費量が削減可能であると試算した。
新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.22,2015 pp33-39
デシカント外調システムの開発
第1報 低温再生型除湿材と吸着熱交換器の可能性検討
田尾道義、鈴木正美、近都州彦、立野岡誠
近年、事務所建物において、省エネルギー性と居住者の快適性を両立させるという観点から、潜熱顕熱分離空調が注目されている。本研究では、効果的な除湿機構として外調システムに着目し、低温再生型除湿材を用いたデシカント外調システムの開発を進める。
本報では、まず、低温再生型除湿材を用いたデシカント外調システムの基本構想を検討した。次にいくつかの低温再生型除湿材について水分の吸着量を測定し、吸着量の多い除湿材を選定した。さらに、選定した除湿材を添着させた吸着熱交換器を試作し、基本構想の温湿度条件における吸着・脱着量を測定した。その結果、1) 吸着熱交換器に適した除湿材TMPS-1.5Aの有効的な可能性が示唆され、2) 除湿材の吸着熱を冷却することで吸着速度が増加する可能性が示された。
新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.22,2015 pp41-47
保温材下における建築設備配管の外面腐食事例とその解析
松川安樹、津波古敦信
建築設備の配管系では、保温材下の外面腐食が、冷温水用亜鉛めっき鋼管や冷媒用銅管にたびたび発生している。しかし、その発生要因は明確でなく、腐食形態や進行速度は事例により様々である。また、腐食の発生機構は、配管材料や保温材の種類によって異なることが推察される。本報では、建築設備配管系で過去に発生した外面腐食の事例を整理し、その要因と対策について考察、化学装置や石油化学プラントと比較した結果を述べる。
新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.22,2015 pp49-58
建築設備配管の腐食診断・解析の基礎と最近の分析技術
松川安樹、津波古敦信
建築設備の長寿命化を図るためには、予防保全的な腐食診断や、腐食障害が発生した場合の原因究明が不可欠である。しかしながら、腐食診断や腐食原因の解析方法について系統的にまとめられたものはあまりなく、その手法 (ノウハウ) は技術者の経験によるところが大きい。本稿では、建築設備配管を対象とした腐食診断の進め方と診断結果の解析方法、および最近の分析技術を紹介する。
新菱冷熱工業株式会社中央研究所報,Vol.22,2015 pp59-64
風量測定装置 WINSPEC ®
田中幸悦
建築物に設ける各設備においては、竣工前にそれぞれの性能試験が行われる。空調設備では、各器具の給排気量が設計値通りになっているかを確認する必要があり、筆者らはこれらの風量測定を合理的に行うため、フード利用測定法を採用した装置"WINSPEC (ウインスペック) "を開発した。フード利用測定法は、壁面や天井面などの制気口にフード付風量計を当てて測定する方法で、WINSPECは風量計として風速センサーを用いた多点風速測定を採用し風量を求めている。本装置の特長は、フードを天井の制気口へ当てるための昇降機構が移動台車と一体になっており、建設現場内を容易に移動できることである。また、測定データをUSBメモリに記録するため、提出用データの作成も効率化が図れる。
本報告は、WINSPECの概要を述べ、実際に建設現場での運用実績から装置の有用性を示す。