第3回
江崎浩氏 (東京大学大学院教授) に聞く
“電力危機に向けた提言”

新しいビジネスモデルが設備業界から登場する

今回の危機は、設備業界がイノベーションにチャレンジする機会でもあると考えています。これまでのESCO (Energy Service Company.企業や公的施設の省エネを支援して削減エネルギーコストから報酬を得る) などのほかに、もっと違った新しいビジネスモデルが設備の世界から出てくる感触がありますね

他の業界での例ですが、 (株) ウェザーニューズの創業者・石橋博良氏は「気象庁の取れないようなピンポイントのデータを取って提供するとお金になる」と考えました。まさにインターネットの技術を使ったのですが、それが新しい気象情報サービスとして成立したわけです。そういう挑戦が必要でしょう。インターネットのイノベーションと応用事例を、設備の世界にどう持ち込むかを考えるべきです。

— インターネットや情報通信のようなビジネスモデルが、建築設備業界でも可能だと?

コンピュータ業界で起こったイノベーションは設備業界でも起こりますよ。少なくとも、これからインターネットのようなオープン化がエネルギーの世界を変えるのは確実です。情報通信の世界では電電公社がなくなって、標準化が進んで競争が活発化しました。同じことがエネルギーについても、この夏から起こります。

いずれにしても電気に全部依存することはムリだとわかってきました。ならば、ほかのエネルギーも取り込んでいかねばならない……となれば設備構造の変更に目を向けざるを得ませんからね。そういう経験を初めてすることになります。スマートグリッドが3年ほど前から提唱されてきましたが、これまでは掛け声が先行していた。それが、まったく変わるわけです。そうして皆で本気になってスマートグリッドを目指すと、それが推進力になります。

科学技術に関係する人間全員で使用電力削減を社会的に達成していかなくてはなりません。しかも単に減らせばいいのではありません。それだけではなくて、どうやったら経済活動を維持して、次の発展につなげることができるのかを考えなくてはいけないのです。

まさにチャレンジですが、それをポジティブにとらえて50%ぐらいエネルギー使用量を減らしてしまい、その分だけ経済活動を増やしてもいいんです。たとえば私が社外取締役を務めているベンチャー企業のユビテックでは、企業活動レベルは維持しながら電力使用量を46%減らすことに成功しました。そうすると減らした分の電気代が浮きますね。その分で生産を増やして「打って出る」という策も可能になります。

— インターネットや情報通信のようなビジネスモデルが、建築設備業界でも可能だと?

コンピュータ業界で起こったイノベーションは設備業界でも起こりますよ。少なくとも、これからインターネットのようなオープン化がエネルギーの世界を変えるのは確実です。情報通信の世界では電電公社がなくなって、標準化が進んで競争が活発化しました。同じことがエネルギーについても、この夏から起こります。

いずれにしても電気に全部依存することはムリだとわかってきました。ならば、ほかのエネルギーも取り込んでいかねばならない……となれば設備構造の変更に目を向けざるを得ませんからね。そういう経験を初めてすることになります。スマートグリッドが3年ほど前から提唱されてきましたが、これまでは掛け声が先行していた。それが、まったく変わるわけです。そうして皆で本気になってスマートグリッドを目指すと、それが推進力になります。

科学技術に関係する人間全員で使用電力削減を社会的に達成していかなくてはなりません。しかも単に減らせばいいのではありません。それだけではなくて、どうやったら経済活動を維持して、次の発展につなげることができるのかを考えなくてはいけないのです。

まさにチャレンジですが、それをポジティブにとらえて50%ぐらいエネルギー使用量を減らしてしまい、その分だけ経済活動を増やしてもいいんです。たとえば私が社外取締役を務めているベンチャー企業のユビテックでは、企業活動レベルは維持しながら電力使用量を46%減らすことに成功しました。そうすると減らした分の電気代が浮きますね。その分で生産を増やして「打って出る」という策も可能になります。

データも全部公開すればオープン化が加速する

—私ども新菱冷熱でも「東京・四谷を、タスマニアに。」と謳って、本社ビルで40%の省エネを達成する改修工事に取り組んでいます。これも、ビルの外観を守りながら中身を変える、つまりストックをどう活かしていくかという見本を示そうというものなんです。

それは素晴らしいですね。壊してしまうのは簡単ですが、歴史を尊重していく。これは、この東大のビルも、ほかの企業もやっていますが、技術の挑戦の歴史を発展した社会の中に自分たちのビルで見せていくことです。それでこそ、皆にもやってもらえるわけですね。ぜひ広く公開していってください。

—ありがとうございます。恐縮です。

私どものGUTPでも、この夏の電力節減の実際について、設計図もデータも全部公開していきます。いい技術があって、いいデータがあれば、どんどん公開して、みんなに使ってもらえばオープン化が加速します。GUTPはそういう考え方で進めています。
夏の節電については他にも提言は出ていますが、ほとんど理論だけで数字の裏付けが伴っていません。実証性がないんですが、われわれの場合は前年対比の実データを提供できます。構想段階の理想論だけではなくて、現実にどうなっているのかを示していくことができるんです。そういうようにして、優れた要素技術をどのように積み上げて、必要とされる目標値を実現可能なものにしていくのかが、これからは大切です。

ですから、LED照明やエアコン、センサーなどが、それぞれ孤立したものとして取り付けられるだけでなく、協調して設備に取り入れられていくということが一気に進むはずです。そういう動きの中で、これからLEDもエアコンも日本は世界のトップランナーとしてやっていけるようになります。そのビジネスモデルは世界にもあまりないんです。理論だけならカリフォルニア大学バークレー校などにもたくさんありますが、彼らはエアコンをコントロールするようなことは"実際には"できないんです。そういう面で日本は世界に競争力を持てる産業構造に変えられます。そのイノベーションを5年でやらなくてはいけません。

次は、インターネットの世界について、です。

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