第2回
梶谷誠氏 (電気通信大学長) に聞く
"連携の力"

始まりはコミュニケーションから

— 連携の進め方なんですが、成功した会社の例はありますか?

新菱冷熱みたいな成功例は、そんなに多くないんですよ。ほかで例を挙げると、長野県の伊那に本社があるタカノ株式会社は、大学との連携によって発展した成功例ですね。
タカノさんは、もともと主としてバネなどを作っていたのですが、新しい事業への展開を模索する中で、産学連携を取り入れていくのです。たとえば、当時の社長がある工場を見学したとき、若い女性が目視で疵の検査をしているのを見て、これからは自動化が必要だと考え、画像処理による自動検査に取り組みたいと、信州大学工学部へ指導のお願いに行くんです。エレクトロニクスについては素人の小さな会社ですから、なかなか応じてもらえなかったのですが、何度もお願いして、社員を大学に派遣し共同研究をして、画像処理装置の製品化に成功するのです。そのおかげで、液晶のカラーフィルターの検査装置では、海外を含めて80%以上のシェアを持つ製品も現れています。

また、信州大学農学部との共同研究で誕生した赤い花のソバから蜜を採った蜂蜜「高嶺ルビーはちみつ」など健康食品事業まで手がけています。下請けじゃなくて、自立した事業が産学連携でできるようになり、一部上場企業にまで成長したのです。

— ところで電通大は、きわめてオープンな大学で、学内の歩道を地域の方々が自由に歩いていますが?

外の人が大学に出入りしている状況がいいんです。よく「大学は敷居が高い」なんて企業の人が言うじゃないですか。そういうものをなくすには、双方のコミュニケーションが大切なんです。

ですから、連携を目指す企業の方には、いろんな研究会やシンポジウム、講演会に出ることと、その後の情報交換会が大事だよと言うんです。そこでウマが合う先生に「今度研究室を見せてください」と言っておくといい。そうしてネットワークを広げていくのがいいんです。

外国の大学ではキャンパス内に企業があって、しょっちゅうパーティをやってるじゃないですか。今度、電通大も西キャンパスに5階建てでインキュベーション (起業支援) と共同研究のための施設を作ります。つまり交流しながら共同研究を進めていきたい。ここには、宿泊できるシングルルームも4室あって、集中して研究できるように、と考えています。

成功には仲介役も重要

— 大学と企業の連携といえば、TLO (技術移転機関) は、いまどれくらいあるんですか?

全国に40いくつあります。でも、TLOの「大学の知的財産を民間に移転して収入を得る」ビジネスモデルというのは、なかなか成り立たないんですよ。ですから、電通大の株式会社キャンパスクリエイトは、当初TLOの認可なし、補助金なしで始めました。

それは、会社設立の狙いがいわゆるTLOと違って、「大学が本来の研究と教育に専念できるようにする」ことにあり、「教育と研究以外のことを頼める会社」を作ろうとしたんです。つまり、大学の先生の本来の仕事以外の雑用をいろいろやってもらう会社なんです。先生が教育と研究に専念するための、広い意味での産学連携なわけです。

最初は商社のようなことから始め、黒字を出したんです。多くのTLOは、補助金を除くと赤字なんですよ。技術移転で儲けようというのは極めて困難なのが実情です。

キャンパスクリエイトのいまの業務内容をみると、産学の連携に何が重要なのかがわかりますね。特許売買による利益は少ないんです。多いのは、先ほど話した共同研究の斡旋とか、大学と企業をうまくつなぐ仲介役が求められている。それと、ファンドを取りに行く申請など連携を補助する役割が中心ですね。

このほか、人材派遣業や旅行業までやっています。キャンンパスクリエイトは中国とのパイプも強くて、先生たちの中国出張を支援するなどのサポート役をやっています。

次は、連携と人材育成について、です。

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