第2回
梶谷誠氏 (電気通信大学長) に聞く
"連携の力"

教育に投資しよう

— スーパー連携大学院の「グリーンフロート構想」が話題を集めています。

未来都市の構想ですから「夢」がある。夢があるんだけど未解決の課題もいっぱいあります。構想の提案者である清水建設株式会社だけの技術では解決できないので、大学と他のいろんな企業が連携して基礎研究と技術開発をする必要があるわけです。課題ごとに研究会を作って、大学や企業に参加のお願いを始めていますが、大学院生も研究に参加させる。若い人が参加するためには夢がないといけませんから。

昨年の秋、フィンランドを訪問しました。フィンランドは、元ソ連の勢力下にあったんですが、ソ連崩壊後、経済危機に見舞われました。そこで当時29歳の文部科学大臣が「教育に投資すれば経済に還ってくる」と言って教育費を大幅に増やしたのが実ったんですね。そのとき彼は「教育は費用ではなく投資だ」と言っているんです。フィンランドでは産学連携が活発で、ヘルシンキ工科大とノキアは、すごい連携をしています。

— 至言ですね。

その点で言えば、最近よその国はみんな教育費を増やしている (韓国は2000年に対して140%増) 中で、日本だけ減らしているのは由々しき問題だと思うんです。来年度予算では、「10%削減」なんて話も出ていて、教育の質を上げないといけないのに、先生の人数も、サポートする事務職員・技術職員の人数も減らさざるを得なくなります。日本の将来に最も重要な人材育成が危機に直面しています。

もっと「リスクにチャレンジする人」を育てないといけない。ところが最近の日本は、海外に出て行く留学生が減り、アメリカで学位を取る人も激減して、新しいことに挑む若者が育っていない。そういう教育をしてこなかったわけです。ぜひ「チャレンジする人」を育てていきたいと思っています。

連携は経験を豊富にする

— 連携が重要なのは、異質なものとの出会いが刺激になるからですか?

いちばんは「経験を豊富にする」ということです。たとえばアメリカのベンチャーファンドは、たくさん失敗したベンチャー経営者に投資する。失敗の経験を重視しているんです。ところが日本では、そんな見方をしない。

けれども「成績がよくて、いい大学を出て、チャレンジしないから失敗経験がない」なんて人ばかりで、いいのでしょうか? 優秀なんだけど失敗経験がない人ばかりが評価されるというのは「いかがなものか」と思いませんか? もっと「いろんな経験をしていること」を重視しないといけない。

— 私ども新菱冷熱も、国内の建設市場が縮小する中で、新しい展開を考えなければいけないのですが……。

私は空調には素人ですが、インド、ブラジル、アフリカなどへ目を向けることと、エネルギーをたくさん使う設備じゃダメですから、機械的、工業的な仕組みだけでなく自然のものを利用するなどの新しい発想が必要ではないでしょうか。

たとえば北海道と九州が同じ仕組みというのではなくて、生態、環境などを含めた全体を考える……そんな知恵が求められています。それには、一つの分野だけではない連携が有効です。会社も、自社だけではなく連携をうまく利用できるかどうか、それが生きる道ですよ。

まず、自分のところの強みを一つ持つことですね。それを連携で組み合わせて付加価値を生んでいく。電通大も「うちはココ」という強みをはっきりさせて、お互いの強みを生かして新しいことにチャレンジしていきたいですね。

— 本日はどうもありがとうございました。

聞き手 中央研究所長

梶谷 誠 (かじたに まこと) 氏

国立大学法人電気通信大学長。1940年生まれ。
電気通信大学卒。東京工業大学大学院博士課程修了 (工学博士) 。 専門分野は知能ロボット研究等の機械工学。産学官連携の基盤となっている「コラボ産学官」初代理事長 (現顧問) 。グリーンフロート構想で話題を呼んでいる「スーパー連携大学院」協議会委員長。

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