PROJECT STORY 01 独創の技術で、
省エネルギー性能を
追求する。

変風量コアンダ/ダイナミックレンジ
放射空調システム開発プロジェクト

PROLOGUE

東京・神田。下町の面影も残るこのビジネス街に、2020年7月、建設業界でも注目されるオフィスビルが完成した。新菱冷熱が事業主であり基本計画から設計、施工まで一貫して携わった新菱神城ビルだ。敷地もさることながら高さも限られる条件の中、床面積を確保しつつ、環境エンジニアリング企業として、どのようなプロセスで省エネルギー性能を追求するか?その最適解を求めて、プロジェクトチームが挑んだのが「変風量コアンダ空調システム」と「ダイナミックレンジ放射空調システム」という2つの先進技術の開発だった。空気調和・衛生工学会の学会賞技術賞の受賞にも至った、挑戦の軌跡をメンバーたちの生の言葉で紹介する。

  • 「H.I.」の写真

    MEMBER 01

    研究開発

    研究開発

    H.I.

    経営企画本部 中央研究所
    2014年入社
    理工学研究科 建築学専攻修了

  • 「Y.S.」の写真

    MEMBER 02

    設計

    設計

    Y.S.

    都市環境事業部
    設計二部 設計二課 課長
    1993年入社
    工学部 機械工学科卒

  • 「R.I.」の写真

    MEMBER 03

    設計

    設計

    R.I.

    丸の内支社
    技術一部 設計課
    2017年入社
    理工学部 建築学科卒

CHAPTER 01

今回のプロジェクトの
経緯を教えてください。

「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真
「H.I.」の写真
新菱神城ビルが竣工したのは2020年7月ですが、社内でプロジェクトが動き始めたのはいつ頃だったのでしょうか?
「Y.S.」の写真
2014年頃だと思います。私はプロジェクトメンバーとして、かなり早い段階から計画に携わっていました。
「R.I.」の写真
この新菱神城ビルは、自社ビルということもあり、計画にはとても思い入れがあったと聞いています。
「Y.S.」の写真
そのとおりです。企画や設計の初期段階から深く関わることができたのもこれまでにない経験でした。だから、これまでにない空調設備をつくってやろうと意気込んでいたのを覚えています。
「R.I.」の写真
基本計画で重要なテーマとなったのは省エネルギー。脱炭素社会への意識の高まりや、竣工間際にはコロナ禍の影響もありましたし、換気などの空調技術にも社会の関心が高まったタイミングでしたね。
「H.I.」の写真
実際の設計にあたっては、都心の限られた敷地で建物の高さも制限されるなど条件面で厳しいものがありました。
「R.I.」の写真
そこでチャレンジすることになったのが「変風量コアンダ空調システム」と「ダイナミックレンジ放射空調システム」という2つの新技術だったわけですね。
「Y.S.」の写真
そうです。ところで、R.I.さんが設計課に配属となったのはいつでしたか?
「R.I.」の写真
2018年4月です。このビルの着工がその年の夏でしたよね。私は配属直後に社内でも注目されるプロジェクトに飛び込むことになり、プレッシャーは大きかったです。
「Y.S.」の写真
私が開発の全体を取りまとめ、R.I.さんがそのサポート、中央研究所のH.I.さんが熱流体解析の専門家として支援するというのがそれぞれの役割でしたね。

CHAPTER 02

開発はどのようなステップで
進んでいったのでしょうか?

「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真
「Y.S.」の写真
今回のプロジェクトでは、先駆的な技術に挑んだこともあり、設計部門と研究所の密な連携が開発の決め手となりました。
「H.I.」の写真
設計事務所やY.S.さんが考案した技術に対して、研究所の私たちが実験や熱流体解析を行い、結果をフィードバックするという流れを繰り返しましたね。
「Y.S.」の写真
そのために研究所では、大規模な実験施設まで新設しました。
「H.I.」の写真
計画しているビルの一部を再現したモックアップを建てました。温熱環境の実験に対応させるのはもちろんのこと、部屋の寸法や天井の形状などだけでなく壁の色まで忠実に再現しました。これほど大規模なモックアップをつくるのは初めての経験で、いろいろと苦労しました。
「Y.S.」の写真
しかし、この実験室とH.I.さんの存在がなかったら、開発は前進しなかったと思います。
「H.I.」の写真
「変風量コアンダ空調システム」の開発も、当初の吹き出し口形状では想定どおりに可動羽根が作動しないことが判明し、改良を重ねましたね。この改良ではR.I.さんにもずいぶんサポートしてもらいました。
「R.I.」の写真
配属されて早々に何度も研究所と行き来することになり、戸惑いの連続でした(笑)。
「Y.S.」の写真
実験室で実際に開発技術を体感してもらい、快適性を評価するアンケート調査を行ったでしょう。あそこまで踏み込んだ実験も、これまでにないチャレンジでした。
「H.I.」の写真
今回の開発は、株式会社三菱地所設計と芝浦工業大学との共同研究で進め、快適性のアンケート調査は芝浦工業大学の秋元孝之教授のアドバイスによるものでした。
「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真 「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真

CHAPTER 03

どのようにして困難な壁を
乗り越えていったのでしょうか?

「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真
「H.I.」の写真
このプロジェクトでは、新技術の一つとして「変風量コアンダ空調システム」を開発しています。このコアンダ空調とは、空気が天井を這うように流れる“コアンダ効果”を利用してダクトなしで空気を搬送する技術。従来のダクト搬送方式と比べて、天井内のダクトスペースが不要になるため、低階高にすることができ、その分で「+1フロア」が可能になります。
「Y.S.」の写真
従来のコアンダ空調では遠くまで空調空気を届けるためにたくさんの空気を常に吹き出す必要がありました。ところがそれだと常に多くの搬送エネルギーを消費することになってしまいます。そこで、従来型のコアンダ空調に、省エネルギー技術である「変風量」制御を併用する仕組みを開発しました。しかも電気を使わないでおもりの力だけで解決できる技術です。
「H.I.」の写真
しかし、その仕組みをめぐって社内で意見の対立が起きてしまったのですよね。
「Y.S.」の写真
変風量制御下でも一定の吹き出し風速を維持するために、自律式の器具を開発したのです。ところが、精度をよりよくするため自律式ではなく、電気駆動方式に変更すべきだという意見もあり、制御性の改良が大きな課題となりました。
「H.I.」の写真
実際、私が行った実験でも、自律式では制御性に不具合があることがわかりました。その解決に向けて、R.I.さんが奔走することになったのですよね。
「R.I.」の写真
Y.S.さんが改良のために構成部品や部材を一から見直し、それらを早急に調達し、何度も研究所に届けました。果たして壁は乗り越えられるのか……。あの時期は、私も緊張してハラハラの日々でした。
「Y.S.」の写真
そして最終的な実験で課題をクリアできたことがわかった時は、安堵してどっと肩の力が抜けました。あの時はR.I.さんもH.I.さんも一緒に立ち合っていましたよね。
「R.I.」の写真
私も達成感を得られて嬉しかったです。課長のアイデアの豊富さと情熱を目の当たりにできたことは貴重な経験でした。
「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真 「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真

CHAPTER 04

新菱冷熱らしい独創の技術力が
発揮された場面を教えてください。

「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真
「R.I.」の写真
新菱神城ビルでチャレンジしたもう一つの先進技術が「ダイナミックレンジ放射空調システム」です。
「Y.S.」の写真
業界トップクラスの技術力を誇る新菱冷熱らしい独創的なシステムを、どうしてももう一つ実現してみたかったのです。この技術は、業界でも初の試みです。
「H.I.」の写真
これもコアンダ空調システムと同じようにダクトレスの空調システムです。4つの独自技術を組み合わすことで動的(ダイナミック)に温度帯(レンジ)を可変にし、従来方式に比べて大幅な省エネルギーを実現しています。
けれども、このシステムも開発は難航しましたね。
「Y.S.」の写真
従来の放射空調では、配管の腐食を防ぐため、熱交換器を置くのが一般的です。しかし、今回のシステムでは、新菱冷熱が特許を持つ無薬注防食システム「Corro−Guard」と脱酸素装置を採用して熱交換器を置かない“熱交レス”の実現に挑みました。また、新しい放射空調の制御方法も考案し、こちらも研究所での検証を経て導入しています。

CHAPTER 05

プロジェクトの成果を、今後どのように生かしていくのでしょうか?

「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真
「H.I.」の写真
このような設計の改善が施工の最中まで続き、2020年7月、新菱神城ビルはついに竣工となったわけです。みんなで力を出し切った甲斐があって業界でも注目されています。私は、今回のプロジェクトに関連した流体解析などの技術を学会で発表を行うことがあるのですが、高い評価をいただいています。
「R.I.」の写真
省エネルギー性能でも、ハイランクのZEB Readyを獲得しています。
「H.I.」の写真
都市立地の中小規模ビルでは、さまざまな制約があって、省エネルギー性能を追求するのは容易なことではありません。今回の新菱神城ビルでは、その壁を打ち破ることができた。街中では中小規模ビルの方が圧倒的に多いのですから、社会的にも意義の高いチャレンジだったと思っています。
「R.I.」の写真
私自身、若手のうちに研究所と連携した社内プロジェクトを経験できたことは、今後、新菱冷熱の技術者として歩んでいくうえでかけがえのない財産になったと感じています。
「Y.S.」の写真
それに加えて嬉しかったのは、新菱神城ビルが業界でも権威のある(公社)空気調和・衛生工学会の「第60回学会賞技術賞」を受賞したことですよね。業界からも、社会からも注目されるプロジェクトになりました。今回の私たちのチャレンジが引き金になって、新菱冷熱の若い技術者たちがさらに大きな誇りと、そして新技術に挑んでいく勇気を抱いてくれると嬉しいですね。
「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真 「H.I.、Y.S.、R.I.」の写真

RECOMMENDED CONTENTS

「PROJECT STORY 02 空調設備の力で、日本のものづくりを支える。」の写真 「PROJECT STORY 02 空調設備の力で、日本のものづくりを支える。」の写真

PROJECT STORY 02

空調設備の力で、
日本のものづくりを支える。

半導体製造装置メーカー向けクリーンルーム新設プロジェクト

ENTRY

SPECIAL
DNA ~私たちが向き合うもの~
PROJECT STORY 01
~独創の技術で、省エネルギー性能を追求する。~
PROJECT STORY 02
~空調設備の力で、日本のものづくりを支える。~
ABOUT US
事業領域
新菱冷熱の技術力
施工実績
1分でわかる新菱冷熱
PEOPLE & JOBS
社員一覧 ~信頼をつくる人たち~
職種紹介
CAREER & ENVIRONMENT
人財にかける想い
キャリアアップ
耕風寮について
RECRUIT
募集要項・選考フロー
専攻マトリクス
よくある質問

2025年卒 学生

オリジナルIDでの
エントリー、ログインはこちら

リクナビ、マイナビからもエントリーできます。

リクナビリクナビ

マイナビマイナビ

2026年卒 学生

オリジナルIDでの
エントリー、ログインはこちら

リクナビ、マイナビからもエントリーできます。

リクナビ リクナビ

マイナビ マイナビ