PROJECT STORY 02 「次世代電池」の製造を支える、
「ドライルーム」施工への挑戦。

次世代電池向けドライルーム新設プロジェクト

PROLOGUE

カーボンニュートラル実現への取り組みが加速し、持続可能で地球環境に配慮した新たなエネルギーシステムへのエネルギートランジションが進んでいる。そうした中、さまざまな技術革新が進み、その一つとしてリチウムイオン電池に代表される「蓄電池」の需要が急速に高まっている。新菱冷熱は、次世代電池の製造に取り組む大手メーカーの施設において、電池製造に必要な「ドライルーム」の施工を担当した。それは過去に例のない規模と高い品質が求められる挑戦で、新菱冷熱の高い技術力が発揮された取り組みでもあった。

  • 「T.U.」の写真

    MEMBER 01

    施工管理

    施工管理

    T.U.

    首都圏事業部
    技術一部技術一課 課長
    1995年入社
    工学部 建築設備工学科卒

  • 「H.W.」の写真

    MEMBER 02

    施工管理

    施工管理

    H.W.

    首都圏事業部
    技術四部技術二課 課長
    2001年入社
    工学部 建築学科卒

  • 「M.M.」の写真

    MEMBER 03

    設計

    設計

    M.M.

    技術統括本部
    イノベーションハブ
    2020年入社
    農学部 生物環境科学科卒
    ※プロジェクト終了後にイノベーションハブに異動

CHAPTER 01

今回のプロジェクトの経緯を
教えてください。

「T.U.、H.W.」の写真
「T.U.」の写真
カーボンニュートラル実現のカギを握るのが、充電して電気を貯める蓄電池です。よくスマートフォンなどで利用されるリチウムイオン電池も蓄電池の一つですが、今回のお客様(大手メーカー)は、リチウムイオン電池より安全性が高く、小型化できエネルギー密度が高い、次世代電池の開発に力を入れていました。そして今回、次世代電池を製造するためのドライルームが必要となったのです。
「H.W.」の写真
当社ではドライルームの施工実績はあるものの、私にとっては初めての取り組みでした。概要を聞いたときは、大変な現場を担当することになったと思いました。ほとんど知識がない次世代電池用ドライルームの設備システムであることに加え、当社の実績を超える規模の大きさと、求められている工期もプレッシャーでした。
「M.M.」の写真
私も同様です。設計に配属されて間もなかったですから、設計経験そのものが浅く、ドライルームの経験もありませんでした。大丈夫かな、という不安が大きかったですね。
「T.U.」の写真
次世代電池用ドライルームについて改めて調べていくと、当社が過去に施工したドライルームとは異なり、とても難しい条件であることがわかってきました。ドライルームとは空気中の水分をゼロに限りなく近いところまで除去した空間を意味するのですが、次世代電池用ドライルームではどこまで水分を除去するのか、その理由は何か。まずはその理解から始まりました。
「H.W.」の写真
今回の次世代電池には、電池の製造過程で水分が混入すると有毒なガスが発生するリスクがあります。そのため、電池を製造する空間の水分を徹底して排除した低露点環境、つまり高性能なドライルームが求められていたんですよね。
「T.U.」の写真
そうですね。空気に含まれる水分が結露し始める温度を露点温度と言いますが、求められたのは非常に低い露点温度。まさにカラカラに乾燥した環境で、技術的にかなり難しい条件でした。
「M.M.」の写真
低い露点温度を実現することは自体は、除湿機を設置すれば可能ですが、今回の課題はその低露点環境を維持していくこと。さらに、部屋全体の低露点環境を均一に保ち続ける必要がありました。
「H.W.」の写真
そして、今回のドライルームは過去に手がけたことがない規模。これまでも実績はありましたが、実績より大きな規模で、短工期だったこともあり、すべてが規格外のプロジェクトでしたね。

CHAPTER 02

メンバーそれぞれの
役割を教えてください。

「M.M.」の写真
「T.U.」の写真
私は、現場代理人として2022年末に施工現場に入りました。プロジェクト自体は、その数カ月前からスタートし、設計の検討を進めていましたね。プロジェクトの初期から設計に関わったのはM.M.さんでしたね。
「M.M.」の写真
はい、設計事務所から展開された図面の検討から始めました。設計段階の図面をベースに、実際の施工を想定して詳細な検討・調整を進め、施工図を作成していきました。
「H.W.」の写真
私は現場代理人のT.U.さんをサポートする役割でした。T.U.さんは主にお客様との打合せを行うため、私は施工の方針決めや全工程の策定、施工品質の管理など、施工そのものを指揮しました。最盛期には施工管理担当が約20名にもなる現場となったので、メンバーをまとめることも役割の一つでした。
「T.U.」の写真
先ほどM.M.さんが、「不安が大きかった」と言っていましたが、私も、新しいことへの挑戦というワクワク感とともに、無事完遂できるか、現場代理人としての責任が果たせるかどうか、プレッシャーはありましたね。
「H.W.」の写真
プレッシャーを感じているとはぜんぜん思いませんでした。T.U.さんは、お客様との交渉役として現場を進めていましたが、難しい場面もあったのではないですか。
「T.U.」の写真
お客様とお話しする中で難しかったのは、お客様の頭の中にある次世代電池用ドライルームのイメージやニーズを正確につかむことでした。だから普段以上に密なコミュニケーションを心がけ、その中でお客様が望むレベルの提案を進めていきました。まさに日々「必死」でしたね。
「T.U.、H.W.、M.M.」の写真 「T.U.、H.W.、M.M.」の写真

CHAPTER 03

最も高いハードルは
どこにあったのでしょうか?

「H.W.」の写真
「H.W.」の写真
まず大変だったのが、次世代電池用ドライルームに要求される技術を理解すること。またそれを現場でどう施工するか、その方針を決定することです。ドライルームを作るには、除湿機が必要になりますが、今回の現場に合った機種の選定と調達にも苦労しました。その後は、除湿した空気を漏らすことなくいかに部屋に供給させるかについて施工方針を決定。すべての工程が従来のやり方では成り立たず、いろいろな箇所で頭を悩ませ、工夫を重ねました。
「T.U.」の写真
そうでしたね。大規模なドライルームでしたから、非常に多くの除湿機を使用し、除湿した空気を最適な状態で送り込むことが求められました。最大のポイントは、ダクトから空気を漏れさせないこと。ダクトを繋ぐ際の溶接加工、さらにシール施工、貫通部処理など、さまざまな点で高気密性を保つ施工技術を追求しました。施工する前に、当社のイノベーションハブでモックアップ(模型)を作り、テストを行うなど出来る限りの確認をしながら進めました。ほかに、室内を均一なドライ環境にするため、空気を循環させる方法も大きな検討課題でした。これはM.M.さんの設計提案が、実を結びましたね。
「M.M.」の写真
空気をよく循環させるため、吹き出し口の配置を変える設計を提案しました。最も良い空気循環のための検討を重ねた結果、空気の均一度を保ちながら省スペース化にも繋がる最適な配置を実現できました。そしてもう一つ。室内空気の循環設備があるのですが、当初、この設備のダクトは機械室から室内へと配置されるセントラル方式で設計されていました。これを各室の天井内に循環設備とダクトを配置するローカル方式に変更しました。この2つの変更は今回のドライルームの要求条件をクリアする上で大きなポイントになりました。
「H.W.」の写真
そうでしたね、機械室から各室へ長く伸びるダクトを減らし、吹き出し口の配置を変更することで、空気が漏れるリスクを低減し、室内空気を均一にすることができました。それに今後のメンテナンスがしやすくなって、施工面でも工期短縮などのメリットが生まれました。
「T.U.」の写真
当初の設計からローカル方式に変更することを提案し、これが採用されて当初設計より循環用機器を増やすことになりましたが、メンテナンスしやすい動線が確保できること、漏れのリスクが低減するなどのメリットを、3Dモデルを作って説明しました。この提案をお客様にご理解いただき、プロジェクトは大きく前進しました。M.M.さんは、リスク対応にも取り組みましたね。
「M.M.」の写真
はい。万が一、低露点が確保できない状態が生まれると、水分と反応し有毒ガスが発生します。その事態にいかに対応するかが求められました。発生時は何よりも最初に、ガスを人体に安全な濃度まで下げる必要があります。そのため、濾過フィルターを新たに設置し、安全な濃度に処理するスクラバ装置へ導入する設計を進めました。
「H.W.」の写真
これは万が一の事故に備える取り組みですが、そのようなことが起きないように、やはり「漏れない」ことを実現するのが、最大のミッションだったと思います。今回の工事で大きかったのは、社内の施工方法に関する知見を活かせたことです。
「M.M.」の写真
それは私も本当に実感しました。お客様からはさまざまな要望がありました。それらに応えるために、上司やイノベーションハブの皆さん、現場の皆さんに検討方針を相談し、より良い設計を提案していきました。設計やドライルームの考え方などを教えていただくことも多く、大変勉強になりとても心強かったです。
「T.U.、H.W.、M.M.」の写真 「T.U.、H.W.、M.M.」の写真

CHAPTER 04

ついに竣工を迎えて、
どのような気持ちでしたか?

「T.U.、H.W.、M.M.」の写真
「H.W.」の写真
今回は、これまで関わってきた案件でも特に緻密な検討が必要だったので、視界の悪い霧の中を進んでいくようなプロジェクトでした。ですが、技術の検討が進み、先が少しずつ見えていく手応えの中で、やりがいを感じましたね。工事が完了した時は、「本当にできたんだ、みんなよくやってくれたな」と心から思いました。
「T.U.」の写真
施工中は、知識や経験不足もありましたが、逃げることなく諦めず対応できたと思っています。私がお客様との対応に専念できたのは、各チームのリーダーやメンバー一人ひとりが、それぞれの立場で確実に施工を進めてくれたからだと思っています。頑張ってくれた優秀なメンバーには本当に感謝しています。
「M.M.」の写真
どのプロジェクトでも同じですが、自分の考えたことが形になっていくことにやりがいを感じます。特に今回は初めての挑戦でしたし、お客様の要望に応えるため設計においてさまざまな課題に直面したので、やりがいもひとしおでした。施工が完了したときは、達成感より安堵感が大きかったですね。
「T.U.」の写真
引き渡しの日は、今日で終わりという安堵感もありましたが寂しさもありました。ただ私は現場代理人としての仕事が終わったわけではありません。引き渡し後もしばらく常駐し、ドライルームの運転を見守っていました。その後現場を去るときにはじめて、「本当に終わったんだな」という気持ちになりましたね。
「M.M.」の写真
このプロジェクトは、今後確実に需要が高まる次世代電池の増産や新しいエネルギー創造を支えていく取り組みでもありましたよね。
「T.U.」の写真
ええ、社会的意義の高い取り組みでした。次世代電池は、地球温暖化対策にも大きく貢献していくことは間違いないですし、その先駆けとなる建設工事に、携われたことの意味は大きなものがありますね。
「H.W.」の写真
大規模ドライルームを短工期で高い品質で施工したという実績は、今後の自信に繋がりますし、新菱冷熱の技術実績として新しい歴史の一つになると思いますね。
「M.M.」の写真
本当ですね。新菱冷熱の技術力の高さを示すことができたと思います。今後のドライルームの受注、設計・施工面でも、貴重な知見を積むことができました。

CHAPTER 05

新菱冷熱の強み、そしてこの経験をどのように活かしていきますか?

「T.U.、M.M.」の写真
「T.U.」の写真
改めて実感したのは、自分自身に経験に足りない部分があっても社内には必ず経験者がいて、部署に関係なく相談ができ、親身になって応じてくれるところが当社の強みですね。
「M.M.」の写真
私も多くの方のサポートがあったから、走り切ることができたと思います。自分自身に関しては、設計変更の内容とその意図を伝えることの難しさを実感しましたし、いかにわかりやすく伝えていくかを深く考えることのできた時間でもありました。
「H.W.」の写真
これまで培ってきた技術があったからこそ、新しい技術を学べたと思います。新菱冷熱にはさまざまな分野の技術を持ったメンバーがいて、社内には解決の糸口に繋がるものが必ずあることを感じましたし、それこそが当社の強みですね。そういえば、M.M.さんは、今は設計から離れましたよね。
「M.M.」の写真
そうなんです、私はプロジェクト終了を期に研究職に異動になりました。今回の現場での経験を研究活動に落とし込んでいきたいと思っています。また、より現場が進めやすくなる技術やお客様へ提供できる新しい技術の開発にも取り組んでいきたいと考えています。
「H.W.」の写真
苦労はありますが今回のような新しい分野への挑戦は楽しいです。この先も機会があれば新しい分野に社内一丸となって取り組んでみたい。そうすることで、この先もさらに成長していけるのではないでしょうか。
「T.U.」の写真
施工して終わりではなく、次に繋がるような体制を作っていくのが私のテーマの一つだと思っています。ですから、今回のプロジェクトで得た施工経験や知見を社内で展開し、次に施工する担当者へ、しっかりと引き継いでいきたいですね。
「T.U.、H.W.、M.M.」の写真 「T.U.、H.W.、M.M.」の写真

RECOMMENDED CONTENTS

「PROJECT STORY 01 次代を見据え、新たな施工のカタチを目指して。」の写真 「PROJECT STORY 01 次代を見据え、新たな施工のカタチを目指して。」の写真

PROJECT STORY 01

次代を見据え、
新たな施工のカタチを目指して。

新しい施工プロセスへの挑戦
~イノベーションハブ本館建築プロジェクト

ENTRY

SPECIAL
DNA ~私たちが向き合うもの~
PROJECT STORY 01
イノベーションハブ本館建築プロジェクト
PROJECT STORY 02
次世代電池向けドライルーム新設プロジェクト
ABOUT US
私たちの事業活動
プロジェクト実績
1分でわかる新菱冷熱
PEOPLE & JOBS
社員一覧 ~信頼をつくる人たち~
職種紹介
CAREER & ENVIRONMENT
キャリアアップ
耕風寮について
RECRUIT
募集要項・選考フロー
よくある質問

2026年卒 学生

オリジナルIDでの
エントリー、ログインはこちら

リクナビ、マイナビからもエントリーできます。

リクナビ リクナビ

マイナビ マイナビ

2027年卒 学生

オリジナルIDでの
エントリー、ログインはこちら

マイナビからもエントリーできます。